過去の講演会(2024年度~)経済研究所

2026年度 講演会等のお知らせ及び開催報告

4月22日(水)公開講演会「公認会計士への道」の開催報告
本年も恒例の公開講演会「公認会計士への道」(公認会計士制度説明会)を2026年4月22日(水)午後6時より、本学池袋キャンパス8号館2階8202教室において、対面とオンラインのハイブリッドで開催した。対面では12名程度、オンラインでは27名程度の参加者があり、公認会計士という職業や公認会計士試験に関心をもつ大学生や高校生が参加した。

まず、司会(小澤)の進行により、一ノ瀬大輔経済研究所副所長(本学経済学部准教授)から開会の挨拶があった。その後、日本公認会計士協会東京会広報委員会委員であり、本学文学部フランス文学科を卒業された羽山友紀子氏(公認会計士)から、公認会計士制度についてご説明いただいた。

羽山友紀子氏の講演

羽山氏からは、公認会計士の使命、公認会計士が担う監査・税務・コンサルティング等の専門分野、公認会計士試験の仕組み、試験合格後の実務補習や業務経験、登録までの流れについて、具体的かつわかりやすく説明があった。また、公認会計士が監査法人に限らず、企業の経理・財務部門、CFO(Chief Financial Officer)、役員、社外監査役・社外取締役など、幅広いフィールドで活躍していることも紹介され、公認会計士資格が多様なキャリア形成につながることが示された。

左右木丈氏の講演

次に、2025年度公認会計士試験に合格し、本学経済学部を2026年3月に卒業された左右木丈氏から、合格体験談をお話しいただいた。左右木氏からは、公認会計士を目指したきっかけ、受験勉強の進め方、大学生活との両立、試験直前期の過ごし方、就職活動や監査法人での業務のイメージなどについて、実体験に基づいた説明があった。特に、大学の授業と資格試験勉強をどのように両立するか、予備校での学習をいつ始めるべきか、簿記の基礎知識をどのように身につけるかといった、学生にとって身近な論点について具体的な助言が示された。

飯塚幸子氏の講演

続いて、本学理学部の卒業生である飯塚幸子氏(公認会計士)から、公認会計士業界の現状と公認会計士資格の可能性についてご説明いただいた。飯塚氏からは、公認会計士は監査業務にとどまらず、企業、コンサルティング、税務、非営利分野、独立開業など、多様な選択肢をもつ専門職であることが紹介された。また、公認会計士資格は、将来の転職、独立、キャリアの再構築においても大きな支えとなることが強調された。

講演会の後半では、会場参加者およびオンライン参加者から多くの質問が寄せられた。質問は、公認会計士試験の勉強方法、部活動や授業との両立、予備校の活用方法、文学部など経済学部以外の学生が受験する場合の留意点、試験制度の変更、就職活動、監査法人での働き方、合格後のキャリアなど多岐にわたった。講師の先生方には、学生一人ひとりの関心に寄り添いながら、時間の許す限り丁寧にお答えいただいた。講演会終了後も会場では参加者からの活発な質問が続き、公認会計士試験や公認会計士の仕事に対する学生の関心の高さがうかがわれた。

本年度も、後輩のために貴重なお時間を割いて本学までお越しいただいた講師の先生方、立教公認会計士会の皆様、日本公認会計士協会東京会各位には、改めてお礼申し上げたい。

2025年度 講演会等のお知らせ及び開催報告

3月21日(土)公開講演会報告「欧州経済の戦略的自律は可能か?」
立教大学経済研究所主催
経済学部国際部会ワークショップ、東京新世界経済研究会、持続可能性と資源貿易研究会、GPE研究会共催

【日時】2026年3月21日(土)13:30~16:30
【会場】立教大学 池袋キャンパス 8号館2階8201教室
【報告】
  1. 「グリーンディールから産業ディールへ」
    蓮見 雄(立教大学経済学部教授)
  2. 「EUのエネルギー転換の成果と限界—太陽光・EVの対中デリスキングは現実的か?」
    道満 治彦(神奈川大学経済学部准教授)
  3. 「誰のためのオムニバス法案か?—EUサステナブル・ファイナンスにおける“簡素化”の政治性」
    石田 周(愛知大学地域政策学部准教授)
  4. 「EUは自由貿易の旗手か?」
    土田 陽介(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員)
  5. 「欧州金融市場の行方—GXから軍需への転換?」
    高屋 定美(関西大学商学部教授)

【司会】櫻井 公人(立教大学経済学部特別専任教授)

本公開講演会は蓮見雄・経済学部教授の最終講義を兼ねるものであり、親交の深い研究者諸氏の協力を得て実施された。近年、欧州連合(EU)はグリーンディールや脱炭素を成長戦略の柱としてきた。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻や米中対立の激化を背景に産業政策を強化し、「戦略的自律(strategic autonomy)」の実現を模索している。もっとも、その現実は気候中立と競争力、安全保障と市場開放、GX(グリーントランスフォーメーション)と軍需産業、規制強化と簡素化といった複数の目標間で揺れ動いており、行方はなお不透明である。

こうした問題意識のもと、本講演会では「EU経済の戦略的自律=グリーンディール+産業政策+経済安全保障+通商・金融の再編」という複合的視点から、EUの政策を多角的に検討した。

蓮見報告は、EUのグリーンディールから産業ディールへの転換を、産業競争力の低下、投資不足、「電気の時代」の到来、長期構想と企業・家計の生存条件との時間軸のずれという観点から整理し、EUが市民、産業界、国際社会からの信頼低下のリスクに直面し、EUのガバナンスの再構築が必要となっていることを指摘した。

道満報告は、EUのエネルギー転換について、再生可能エネルギー普及や温室効果ガス削減の成果を確認しつつ、電気自動車(BEV)や太陽光発電のグローバルサプライチェーンが中国を中心に形成されている現状を指摘した。そのうえで、欧州における産業基盤の衰退を踏まえると、BEV・太陽光産業の域内回帰と対中デリスキングの両立は困難であると論じた。

石田報告は、2025年以降にEUが進めている企業持続可能性報告指令(CSRD)や企業持続可能性デューディリジェンス指令(CSDDD)、タクソノミー委任規則などの簡素化、すなわち「オムニバス・パッケージ」に着目し、同パッケージが競争力政策を環境・社会目標より優位に置くための再調整であることを明らかにした。

土田報告は、「EUがなお自由貿易の旗手たりうるか」という問いを掲げ、脱炭素・競争力・防衛力という三つの課題を追求するEUの政策運営や、事実上の域内製品優遇措置をもくろむ産業促進法と自由貿易原則との間に生じる緊張関係を検討した。そして、EUの統治のあり方が問われている中で、その先行きは不透明であると結論付けた。

高屋報告は、オムニバス・パッケージ、欧州中央銀行(ECB)における気候要因の反映、防衛投資のEU化などを取り上げ、これらが2025年以降の金融政策の波及経路にもたらす影響を検討した。GXと防衛はいずれも企業の資本コストに中長期的な影響を及ぼすとし、二つの目標を同時に追う中でリスクプレミアムがどの部門に配分されるかを見極める必要があると指摘した。

各報告の後、司会の櫻井氏による「10年後にEUは存在しているか」という刺激的な問題提起を契機として、EUの政治・経済の展望に関する率直かつ活発な議論が交わされた。

以上より、EU経済の戦略的自律は単なる理念やスローガンではなく、産業基盤、エネルギー供給、金融市場、通商秩序、規制の正当性を横断する複合的課題であることが確認された。同時に、EUが掲げる長期的な政策構想が企業や家計、あるいは加盟国における政治的短期制約と衝突する可能性も浮き彫りになった。本講演会は、世界の多極化が進む中で、グリーンディール後のEU経済をめぐる政策転換の意義と限界を深く考察する有意義な機会となった。(参加人数70名)
3月14日(土)公開シンポジウム「福祉排外主義の国際比較—財源保障と財政民主主義」の開催報告
【日時】2026年3月14日(土)15:00~17:30
【会場】池袋キャンパス 8号館8303教室(オンライン併用)
【参加人数】約250名(対面:約70名、オンライン:約180名)
【報告】
  1. 倉地 真太郎(明治大学政治経済学部准教授、立教大学法学部兼任講師)
    早﨑 成都(帝京大学経済学部講師)
    「排外主義の時代における地方行財政の役割」
  2. 谷 達彦(東北学院大学経済学部准教授、元立教大学経済学部助教)
    「アメリカ大都市の移民支援政策と財政—ニューヨーク市の事例」
  3. 池上 岳彦(立教大学経済学部特別専任教授)
    関根 未来(帝京大学経済学部特別任用助教、元立教大学経済学部助教)
    「カナダ移民政策の焦点—受入れ推進からの転換?」
【討論】
高田 寛文(政策研究大学院大学政策研究科教授、同大学副学長)
山脇 啓造(明治大学国際日本学部教授)
【コーディネーター】
池上 岳彦(立教大学経済学部特別専任教授)

いま、日本の外国人政策は転換期を迎えている。政府が「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」(2026年1月)を取りまとめるなかで、どのような自治体行政・財政のあり方を構想すべきか。また、排外主義が強まっていることについて、財政の視点からどのようにアプローチすべきか。排外主義は福祉だけでなく財政全体にも広がっているが、その現象をどう捉えればいいのか。

シンポジウムでは、日本とデンマークの現状をベースに改革の方向性を論じた「排外主義の時代における地方行財政の役割」、ニューヨーク市アダムス市長の下で展開された庇護希望者への対応を中心に論じた「アメリカ大都市の移民支援政策と財政—ニューヨーク市の事例」及びカナダにおける積極的な移民受入れに対して近年の住宅価格高騰がブレーキをかけている問題を中心に論じた「カナダ移民政策の焦点—受入れ推進からの転換?」をうけて、討論者、参加者との質疑応答を含めて、活発な議論が行われた。
3月7日(土)第13回学術研究大会「グローバル政治経済学の課題—危機の欧米、揺らぐマネー、BRICSの交渉力」

会場の様子

【日時】2026年3月7日(土)14:00~17:30
【会場】池袋キャンパス 14号館D301教室
【参加人数】56名
【主催】立教大学経済研究所
【報告】
  1. 土橋 康人氏(北海学園大学経済学部准教授、元本学経済学部助教)
    「漂流する欧米の社会経済秩序—ポピュリズム、新自由主義、リベラルの地殻変動:欧米経済社会システムの疲弊」
  2. 星野 智樹氏(敬愛大学経済学部教授、元本学経済学部助教)
    「進みゆく『脱ドル化』と根強い『ドル化』—相反するスタンスを抱える世界経済の課題」
  3. 蓮見 雄氏(本学経済学部教授)
    「交渉勢力としてのBRICS—中心と半中心の対立と協調」

【司会・コーディネーター】
櫻井 公人氏(本学経済学部特別専任教授)

第1報告

土橋康人氏(北海学園大学経済学部准教授)
土橋康人報告は、欧米の社会経済秩序の変容について、歴史的な連続性と現代に固有の特徴の両面から検討した。まず、国際的な市場の開放と国内の社会政策を組み合わせる「埋め込まれた自由主義」を手がかりに、貿易、資本移動、移民の歴史を整理した。その上で、①経済のグローバル化は、市場の自律的な拡大だけでなく、米国の強権的な経済外交や国家間の政治的交渉によって進められてきたこと、②移民排斥や福祉の受給資格を制限する動きには戦後からの歴史的連続性があること、③戦後秩序を支えた米国中心の国際関係と国内の社会政策のバランスが、21世紀に入り揺らいでいることを指摘した。

さらに、世界金融危機後の産業・雇用の停滞、欧州の緊縮政策と難民危機、中国の台頭などが、国内政治と国際関係の双方を変化させていると論じた。トランプ政権の関税政策などを新自由主義の終焉と単純に捉えるのではなく、新自由主義的な政策と権威主義的ポピュリズム、軍備拡張、移民統制などが結びつく状況に注目する必要があるという。結論として、現在の欧米の政治経済を理解するには、国内と国際の変化を一体的に捉え、歴史的に形成された権力関係や政策体系に対して、各国がどのように対応・適応しているかを分析することが重要であるとした。

第2報告

星野智樹氏(敬愛大学経済学部教授)
星野智樹報告は、中南米の「ドル化」政策を手がかりに、ドルへの依存と「脱ドル化」が併存する世界経済の課題を検討した。まず、国際的なドル決済が在米銀行の預金と決済網に支えられており、米国がその利用を制限する金融制裁は、他国の経済活動や経済主権に大きな影響を及ぼすことを説明した。

その上で、エクアドル、エルサルバドル、パナマを取り上げ、自国通貨への信用喪失やインフレへの対応として、独自の通貨政策を放棄する「ドル化」が選択されてきた背景を明らかにした。特に、エクアドルでは「ドル化」後も中央銀行が存続し、電子マネーや中央銀行証券の発行を通じて、外貨準備の制約を超える実質的な通貨発行が行われたことを示した。

この事例から、通貨発行と財政の結びつき、政策規律の維持という課題は、先進国にも共通すると論じた。また、移民送金によるドルの獲得、中国によるドルを用いた対外融資、米国の対パナマ金融制裁などを取り上げ、通貨の安定をもたらすドル化の恩恵と、ドル依存による脆弱性を整理した。

結論として、根強いドル利用と脱ドル化への動きは、経済的な利便性・安定性と経済主権の確保との緊張関係から生じているとした。さらに、米国自身が金融政策への政治的圧力や金融制裁の拡大によってドルへの信用を損なえば、脱ドル化を促し、自らの金融覇権を揺るがす可能性があると指摘した。

第3報告

蓮見雄氏(本学経済学部教授)
蓮見雄報告は、BRICSを反西側ブロックとして過大評価する見方と、利害の異なる国々の「烏合の衆」として過小評価する見方の双方を批判し、既存秩序の中で自律性と交渉力を高める「交渉勢力」として捉える視点を提示した。まず、加盟国の拡大や経済・資源面での存在感の高まりを確認する一方、金融、安全保障、生産、知識の各分野では、欧米主導の制度や多国籍企業による「構造的パワー」が依然として強いことを指摘した。経済規模の拡大が、そのまま国際的なルール形成や意思決定における主導権の獲得を意味するわけではないという。

その上で、①新開発銀行(NDB)や緊急時外貨準備金基金(CRA)など、既存制度を補完する仕組みの形成、②デジタル、気候変動、資源・エネルギーなどの分野別協力、③加盟国間の利害の違いを、別の分野での譲歩や利益の提供によって調整する「補償的レイヤリング」に注目した。こうした柔軟な協力の積み重ねが、内部に対立を抱えながらもBRICSの結束と活動範囲の拡大を支えていると論じた。

結論として、BRICSは既存秩序を直ちに転覆する勢力ではなく、その制約の下で不公正や不均衡の是正を求め、自律的な行動の余地を広げる勢力であるとした。グローバルサウスとの協力を通じて交渉力を高める動きを捉え、世界秩序をより公正なものへと段階的に変えていく可能性を過小評価すべきではないと結んだ。

質疑応答

質疑応答では、ポピュリズム台頭の背景、AIと民主主義の関係、人民元の国際化、ドル基軸通貨体制の行方、BRICSの役割などが議論された。土橋氏は、格差拡大と移民・難民問題の相互作用や、情報技術による政治への影響を指摘した。星野氏は、ドルの地位を決済や外貨準備の機能から捉える必要性を示し、米国自身の政策が通貨への信用を損なう危険性を論じた。蓮見氏は、ドルの利用と米国の特権を区別し、BRICSの分野別協力が既存のルールをより公正なものへと変える可能性を示した。討論を通じて、世界秩序の変容を経済・政治・制度の相互関係から考察する重要性が確認された。
12月20日(土)公開講演会報告「マルクス・リバイバル—マルクス研究の最前線から危機の時代を考える」
立教大学経済研究所主催・経済学部共催

【日時】2025年12月20日(土)17:00~19:00
【会場】立教大学 池袋キャンパス 14号館2階D201教室
【講師】
斎藤 幸平(東京大学大学院総合文化研究科准教授)
マルチェロ・ムスト(ヨーク大学社会学部教授、立教大学2025年度招へい研究員)
【司会】
佐々木 隆治(立教大学経済学部教授)

2025年12月20日(土)午後5時より、本学池袋キャンパス14号館2階D201教室において、公開講演会「マルクス・リバイバル—マルクス研究の最前線から危機の時代を考える」が開催された。定員293名の教室がほぼ満席となる盛況であった。本講演会では、はじめに斎藤幸平氏とマルチェロ・ムスト氏がそれぞれ講演したのちに、両者の対談が行われた。

【斎藤幸平氏の講演】
『人新世の「資本論」』が50万部を超えるベストセラーになったことで海外から「日本に社会主義ブームがあるのではないか」という期待を持たれることが多いが、1990年代以降、日本のマルクス主義は政治と理論を切り離す方向へ進んだ結果、現実の問題と切り結ぶ変革の思想としての力を失った。その一方で、アメリカではDSA(アメリカ民主社会主義者)が若者を中心に広がり、ニューヨーク市長選でもDSAの候補が勝利したように、欧米では脱資本主義的なビジョンを掲げた左派ポピュリズムが台頭しつつある。

自分はドイツ・アメリカで学んだ経験から、エコロジーとマルクスの晩年のノートを結びつける形で「脱成長コミュニズム」を打ち出した。晩年のマルクスが非ヨーロッパ中心主義・非生産力主義的な思想へと向かっていたことを発掘し、気候変動、格差、デジタル資本主義といった現代の問題に応用しようとしてきたのが自分の研究の核心にある。日本では距離を置かれがちな脱成長論だが、資本主義の矛盾がますます深まるなかで、いずれ何らかの「ハードランディング」が来ることは避けられない。そこに向けて理論を磨き続けること、そして今日集まっているような人々との議論を積み重ねることに、まだ可能性を見出すことができる。アメリカでは2032年くらいにはアレクサンドリア・オカシオ=コルテス議員のようなDSAの候補が大統領選に出るような流れも起こりうるとし、日本においてもそれに続いて変化が来ることへの期待を示した。

【マルチェロ・ムスト氏の講演】
リーマン・ショック以降、富の極端な集中、労働者の権利の縮小、緊縮財政という「改良」が進む一方で、中道左派と右派の政策はほぼ同一になってしまった。そしてヨーロッパ各地で、レイシズムとナショナリズムを基盤とした新しい右翼政党が急伸し、投票率が落ち込む中でその台頭を止める力は弱い。ドイツでは2025年総選挙で20%の票を獲得したAfD(ドイツのための選択肢)の幹部がテレビでヒトラーを「社会主義者」と呼ぶ発言をするなど、数年前には考えられなかった事態が現実になっている。

こうした状況において左派やマルクス主義者が失った機会として以下の三つが挙げられる。第一に、コロナ・パンデミックは公衆衛生の公的管理の重要性と、新自由主義的な民営化の失敗を示す絶好の機会だったが、左派はそれを十分に活かせなかった。第二に、冷戦終結後の世界秩序の構築局面で、新しい平和的な枠組みをつくれなかった結果、今や国連決議なしの戦争が常態化している。第三に、反戦・非軍事主義という左派の伝統的な旗印が忘れられ、「平和主義」がNATO支持と同義になってしまっている。その上で、自身が編集・執筆した『マルクス・リバイバル—キーワードと新解釈』(地平社、2025年)を紹介しつつ、マルクスとマルクス主義は区別されるべきだと主張する。マルクス自身の思想は経済決定論的なドグマではなく、ジェンダー、ナショナリズム、エコロジー、芸術、テクノロジーなどにまで広がっており、マルクスは常に自身の考えを修正・発展させ続けた柔軟な思想家だった。今の時代にマルクスが必要なのは、彼の著作が「答え」を与えてくれるからではなく、現代の諸問題を深く考えるための問いと方法論を提供してくれるからだと述べて、若い世代への橋渡しを訴えた。

【斎藤氏とムスト氏の対談】
最後に行われた対談では、「なぜ資本主義が危機に陥っている時代に、左派・マルクス主義はむしろ弱体化しているのか」という問いを軸に議論が展開された。斎藤氏は、成長を前提としたビジョン(富の再分配・福祉拡大)が機能しなくなった時代に、新しい社会像を描けないまま「現状維持」を守ろうとする姿勢に日本の左派の行き詰まりがあると指摘する。左派政党が何かを積極的に変えていくビジョンを打ち出せずにいる結果、「変えたい」という民衆の要求を右派ポピュリズムに先取りされる逆転現象が起きている。さらにデジタル・プラットフォームによる欲望の操作や思考の管理という、マルクスが想定しなかった問題も状況を一層困難にしているとした。

ムスト氏は、これまでのような「改良主義」対「急進的オルタナティヴ」という区別が北米では曖昧になっており、DSAのような動きが民主党内に留まる限りはラディカルな変革にならないと懸念を示した。そして、フェミニズムやエコロジーに加えて「反戦・反軍事主義」を左派の中心テーマとして再確立する必要があると強調した。第一・第二インターナショナル以来、反戦は左派の根幹だったが、冷戦後のヨーロッパでそれが失われ、ガザやイラクの戦争が続く現在もその問題意識が希薄なままだと批判する。

最後に斎藤氏は、日本の「ハードランディング」(気候変動、人口減少、戦争リスク)を生き延びるための「適応」という新たな思考軸の必要性に触れ、「解放」一辺倒だった従来の左派思想を更新する必要性を主張した。ムスト氏は、マルクスの思想は工場労働者だけを対象とするものではなく、戦争・経済・エコロジーを統合的に捉えるための思想的資源であり続けていることを強調して、本講演会全体が締められた。
11月13日(木)公開講演会報告「EUとデンマークの政治・経済の将来—駐日デンマーク大使の講演および大使を囲んでの立教生との語らい」
立教大学経済研究所主催
立教大学経済学部、駐日デンマーク王国大使館、明治大学倉地真太郎研究室共催

【日時】2025年11月13日(木)18:00~20:00
【会場】立教大学 池袋キャンパス 11号館A304教室
【講師】ヤール・フリース=マスンJarl Frijs-Madsen(駐日デンマーク大使)
【司会・コーディネーター】菅沼 隆(立教大学経済学部教授)
【学生登壇者】
  • 貳方 隆吾(経済学研究科前期課程院生)
  • 菅家 菜々子(経済学部菅沼隆ゼミ)
  • 加藤 珠莉(経済学部蓮見雄ゼミ)
  • 中村 仁香(法学部小川有美ゼミ)
  • 楠本 修平(経営学部尾崎俊哉ゼミ)

本講演会は、デンマークが2025年下期のEU議長国に就任したことを記念して開催され、駐日デンマーク大使がEUの現状と課題、ならびにデンマークの政策や日本との関係について講演したものである。まず、デンマーク社会の特徴として、高い幸福度や住みやすさが挙げられ、その背景には機会均等、普遍的福祉、行政のデジタル化、グリーントランジションへの積極的取組があると説明された。

続いてEUの発展と統治について、第二次世界大戦後の平和構想として出発し、現在は27か国からなる統合体へと発展した経緯が示された。EUは単一市場を基盤に人・モノ・資本・サービスの自由移動を実現するとともに、消費者保護や環境規制など共通ルールを整備している。他方で、各国の主権や文化的アイデンティティを尊重しつつ統合を進める点が強調された。また、意思決定においては多数決方式を採用し、迅速性と実効性を確保している。

議長国としての優先課題としては、安全保障の強化、グリーンかつ競争力ある経済の実現が提示された。特にロシアの侵攻を受けたウクライナ支援や対露制裁、エネルギー依存からの脱却が重要課題とされ、EU全体で2040年までにCO2排出量を大幅削減する目標も共有された。

さらに、日本とEUの関係については、経済連携協定(EPA)と戦略的パートナーシップ協定(SPA)を基軸に、貿易・安全保障の両面で協力が深化していることが指摘された。再生可能エネルギー分野では、デンマークの洋上風力発電の成功事例が紹介され、日本への示唆も示された。

最後に、人口減少や労働市場の変化への対応として、育児支援や職業訓練・リスキリングの重要性が論じられた。全体として本講演は、EUとデンマークの政策的方向性を多角的に示すとともに、日本との連携強化の可能性を展望する内容であった。

本講演後の質疑応答では、5名の学生が登壇し、デンマークおよびEUの政策課題について多角的な質問が行われた。まず中村仁香さんは、ロシアのウクライナ侵攻を背景とした防衛強化の文脈から、女性を含む徴兵制度拡大の是非と国内世論について質問した。大使は、男女平等の理念から軍務参加の機会拡大が議論されているものの、現時点で女性の強制徴兵はなく、あくまで選択肢として前向きに受け止められていると説明した。

続いて菅家菜々子さんは、少子高齢化への対応を取り上げ、デンマークおよびEUの出生率対策について質問した。大使は、保育や育休制度など子育て支援は充実しているものの、晩婚化やライフスタイルの変化が出生率低下の背景にあり、政策効果は限定的であると指摘した。また出生率対策は各国の権限事項であり、EUではなく国家単位で対応すべき課題であると述べた。

加藤珠莉さんは、再生可能エネルギーの導入に伴うコストと公平性について質問した。これに対し大使は、北欧の共通電力市場により価格は変動するが、国民は環境負荷低減のための追加負担を受容していると説明し、化石燃料の利用がもたらす外部性も考慮すべきであると強調した。

楠本修平さんは、EU内の多様な経済体制と産業政策の調整について問うた。大使は、デンマークは自由市場志向が強い一方、EUでは国家補助のルールにより競争の歪みを抑制していると説明しつつ、近年は国際競争の激化を踏まえ、戦略産業への支援も一定程度認められていると述べた。

最後に貳方隆吾さんは、労働市場政策と職業訓練の役割について質問した。大使は、デジタル化やAIにより技能需要が急速に変化する中、デンマークのリスキリング制度は強みであるが、新たな経済環境で有効性を維持できるかが課題であると指摘した。また人手不足分野への人材配置や新職種の創出の重要性にも言及した。全体として、活発な質疑を通じて、デンマークおよびEUの政策の特徴と課題が具体的に共有された。

最後に、本講演会開催の経緯について述べておきたい。2025年7月1日から12月31日の期間、デンマークがEUの議長国に就任した。これに伴い、駐日デンマーク大使館より、経済学部菅沼隆と明治大学政治経済学部倉地真太郎准教授のもとに、表記のタイトルで大学において講演会を開催したいとの申し入れがあった。明治大学と本学で開催することにし、本学では経済研究所が主催することになった。通訳の経費を倉地真太郎研究室にご負担していただき、共催として多大なご援助をたまわった。マスン大使は学生と語らう時間を作りたいとの強い要望があり、EUの政治・経済・経営・社会政策を研究している

ゼミの先生に呼びかけ、1名ずつ推薦をいただき、学生登壇者を依頼した。蓮見教授、小川教授、尾崎教授に感謝を申し上げる。また、駐日デンマーク大使館職員で本学文学部卒業生の杉浦康平氏が支援して下さったことに感謝申し上げる。
7月31日(木)公開講演会報告「関係の豊かな社会と幸福へのアプローチ—分断の経済社会と動揺する国際秩序の中で考える Happiness and Sociability: Reflections on a Divided Economyand Society, and a Shifting International Order」
立教大学経済研究所主催
立教大学経済学部、立教大学グローバル都市研究所共催

【日時】2025年7月31日(木)13:30~16:00
【会場】立教大学 池袋キャンパス 14号館3階D301教室
【講師】ステファノ・バルトリーニ(シエナ大学准教授)
【司会】櫻井 公人(立教大学経済学部特別専任教授)

スミス以来の経済学に共通するアプローチでは、より多くを生産し消費できれば、それだけ人は幸福になるはずだった。だが、多くのモノを消費しても幸福感はなく、最近では多くの経験やコト消費も注目される。また、多忙や孤独、依存症や自殺といった現代的で都市的な不幸という課題も潜在する。モノの豊富と不幸の増加については、社会関係の悪化が経済成長を促進するという、氏の言う「防衛的資本主義(Defensive Growth)」という概念が有用である。GDPの経済成長が「ゆたかさ」の象徴と捉えてしまうと、その「ゆたかさ」が社会関係の悪化によってさえ促進されるという事実を見逃すことになる。社会関係が途絶すればそのために新しいサービスを外注しなければならないが、それはGDPを引き上げる、だが、人々は「ゆたか」になっておらず、幸せにもなっていない。バルトリーニ氏は逆に、社会関係の改善こそが幸せな社会を構成する上で最も重要だと強く主張した。

関係の豊かな社会でなければ幸福になれないとするバルトリーニ氏の社会関係アプローチは、従来の経済学の反省をふまえ、経済社会の分断を乗り越える可能性をもつ。世界各国の自国第一主義の背景に経済社会の分断があるとすれば、動揺する国際秩序の深層を探るために、氏の研究はグローバル政治経済学アプローチを補完するものとしても意義があるはずである。

Since Adam Smith, the conventional economic wisdom assumed that the more we produce and consume, the happier we are. However, more consumption does not necessarily lead to greater happiness, as shown by the disappointing trends of well-being in developed countries.
Contemporary urban issues such as busyness, loneliness, addiction, and suicide lurk beneath the surface.Prof. Bartolini's social capital approach, which argues that happiness is impossible to achieve without a society rich in relationships, reflects on the shortcomings of conventional economics and on how to overcome the current fragmented and unhappy society. Prof. Bartolini shows that rising unhappiness lies behind the rise of nationalism around the world and explores the underlying causes of the unstable international order.

■ステファノ・バルトリーニ 氏
イタリア・シエナ大学・政治経済学・統計学部准教授。専門は、経済発展論、環境経済学、社会関係資本論、幸福論。1993年、シエナ大学博士(論文タイトル:Growth, Externalities, Property ights)。主著『幸せのマニフェスト-消費社会から関係の豊かな社会へ』2010年、『幸福の生態学』2021年。国連・OECD・世界銀行などで、幸福・環境をめぐる国際会議での基調講演を多数行う。
4月23日(水)公開講演会「公認会計士への道」の開催報告
本年も恒例の公開講演会「公認会計士への道」(公認会計士制度説明会)を2025年4月23日(水)午後7時より、本学池袋キャンパス8号館2階8202教室において、対面とオンラインのハイブリッドで開催した。対面は15名程度の参加者であったが、オンラインを併せると延べ50名以上の参加者を得た。

羽山友紀子氏の講演

まず、司会(小澤)及び蓮見雄経済研究所長(本学経済学部教授)のあいさつの後、日本公認会計士協会東京会広報委員会委員で、本学文学部フランス文学科卒業された羽山 友紀子氏(公認会計士)から公認会計士制度の説明があった。羽山氏は「公認会計士の仕事と魅力」と題して、公認会計士の使命、監査・税務・コンサルティング・企業内会計士といった公認会計士の専門分野と活躍フィールド、試験制度の概要等についてお話くださった。また最後に現役公認会計士の声として、公的な団体や非営利団体にも監査業務が拡大していることや、海外での活躍の機会、女性公認会計士の活躍、AI時代の公認会計士業務等、いかに公認会計士が魅力的な仕事であるかについてご説明いただいた。

佐々木登那氏の講演

次に、合格体験談として、公認会計士試験に本学経済学部会計ファイナンス学科在学中に合格し、2025年3月に本学を卒業され、現在、有限責任あずさ監査法人に勤務されている佐々木登那氏からお話しいただいた。特に、公認会計士を知ったきっかけ、大学生活と資格試験勉強の両立、試験勉強の仕方、試験合格後の日常など、具体的かつ的確に説明があった。また、佐々木氏からは、公認会計士試験にチャレンジする後輩たちに向けてメッセージが送られた。

山田浩一氏の講演

最後に山田浩一氏(公認会計士・立教公認会計士会会長)から、ベテラン公認会計士としての視点から、公認会計士という職業の魅力についてお話があった。この仕事の未来は明るく、ぜひともこの試験にチャレンジしてほしいとの激励をいただいた。
講演会終了後には、対面参加の学生とオンライン参加の学生から、多くの質問が寄せられた。予定時間を大幅に超過したが、講師の先生方には質問に真摯にお答えいただいた。本年度も後輩のために貴重なお時間を割いて本学までお越しいただいた講師の先生方と日本公認会計士協会東京会各位には、改めてお礼申し上げたい。

2024年度 講演会等のお知らせ及び開催報告

3月15日(土)公開シンポジウム「移民政策と財政民主主義—アメリカ・スイス及び日本の事例を中心に—」
立教大学経済研究所主催
日本学術振興会・科学研究費助成事業「移民の福祉財政的分析—『移民政策』のための自治体財源保障の検討—」(基礎研究(B)(一般)、課題番号:23K25598)共催

【日時】2025年3月15日(土)13:30~16:30
【会場】立教大学 池袋キャンパス 8号館8303教室(オンライン併用)
【報告】
  1. 倉地 真太郎氏(明治大学政治経済学部准教授、本学法学部兼任講師)
    「持続可能な外国人住民支援のための財源保障を考える」
  2. 掛貝 祐太氏(茨城大学人文社会科学部講師)
    「財政民主主義と移民の周縁化—国内外の事例から—」
  3. 早﨑 成都氏(帝京大学経済学部講師)
    「アメリカ聖域都市の財政構造」
【討論】
岸見 太一氏(福島大学行政政策学類准教授)
山本 直子氏(東洋英和女学院大学国際社会学部講師)
【コーディネーター】
池上 岳彦氏(本学経済学部教授)
3月8日(土)第12回学術研究大会「日本銀行の金融政策から見た日本の経済社会」の開催報告

会場の様子

【日時】2025年3月8日(土)14:00~17:30
【会場】池袋キャンパス 8号館8303教室
【参加人数】120名
【報告】
1.山本 周吾氏(本学経済学部准教授)
「日本経済における生産性と賃金・物価の相互連関:金融緩和政策の波及経路の整理」
2.山口 義行氏(本学名誉教授)
「『ぬるま湯資本主義』の終焉と日本経済」
3.金子 勝氏(本学経済学部特任教授)
「アベノミクスの罪と罰」

第1報告 山本周吾氏(本学経済学部准教授)

山本周吾報告は、①豊かさを実感するためには実質賃金の上昇が必要であるが、そのためには、生産性と収益の向上が必要ある。②コロナ禍以前、日銀がアクセル全開で金融緩和をしたが、デフレから脱却できなかったのは、構造的な問題も原因があるのではないか。③そのためにバラッサ・サミュエルソン効果に注目し検討を加える。④また、近年のデフレに関する先行研究をサーベイする。その中では、「価格マークアップ」と「賃金マークダウン」について検討を加える。⑤さらに、金融政策・金融問題と絡めて論じる必要があるので、投資、そのなかでも無形資産に注目して分析を加える。⑥上記の内容を、産業構造を考慮して、先行研究を紹介しつつ、生産性、賃金、価格の関係を明らかにした。
結論としては、金融政策の経路について①「理想の波及経路」が考える有形・無形資産の向上による生産性・賃金・価格の上昇とは異なり、「実際の波及経路」では、大企業・貿易財産業(のみ)に恩恵がもたらされる構造になっていること。②日銀ができることはベースマネーの供給と政策金利の調整くらいしかないこと。③しかし、実体経済の内部における資金配分までは、日銀は管理することが難しいこと。④ 以上より、日本経済では産業構造や、金融仲介機能にも問題があり、日銀だけで対処できなかった可能性があること。⑤ただ、コロナ禍以降、円安や人手不足を通じたインフレ圧力で状況変わりつつあるのではないかというものであった。

第2報告 山口義行氏(本学名誉教授)

山口義行報告は2014年に安倍・黒田路線がスタートしたが、その帰結は、①低金利⇒活況なき倒産減、①低金利⇒活況なき倒産減、①低金利⇒活況なき倒産減であったことを明らかにした。そして、この現象こそ、「ぬるま湯資本主義の成立」させたという。

特に、中小企業を取り巻く環境の厳しさが顕著である。それは①物価高による仕入れコストの上昇、②前代未聞の人手不足、③技術革新に伴う仕事の喪失、④金利上昇による資金調達コストの上昇がからも明らかだという。従って中小企業は、ぬるま湯資本主義は終わったと考え、覚悟を決めて自己変革に挑まなければならない。そのために中小企業が目指すべきは、①より効率的な会社になる、②価値創造・顧客創造をより強力に推進できる会社になる、③人を引き寄せられるより魅力的な会社になることだ。その時重要なのは、こうした課題を達成すべく「新しい考え方」に立ち、「新しい仕組み」を構築することだ。それは、質的変化を遂げることでもあり、それを再定義しなければならないという。山口報告は自己変革に挑戦する企業の実例を紹介しながら、社会は再定義に時代に入ったと結論づける。

第3報告 金子勝氏(本学経済学部元特任教授)

金子勝報告は、アベノミクスは①デフレ脱却に失敗したこと。②アベノミクスの結果は、経済成長ができず、産業衰退と貿易赤字を引き起こし、内部留保膨張と実質賃金低下し、地方と人口減少が起きた。③利益政治と腐敗を生み出し(ルールと規律の崩壊)、隠れた防衛費膨張を引き起こしていることを明らかにした。

問題は、アベノミクス失敗の総括をしないばかりか、赤字国債に依存するあまり円安インフレが起きていること。実質賃金低下と社会保障が削減されることにより消費が伸びないこと。歳出の中身を問わないため、知識経済化、ジェンダー、少子化対策がおくれていること。さらに、フェイクファシズムの危険性が増していること。そして、最も重要なことはこのまま減税ポピュリズムが続けば日本を滅ぼすことになるというものであった。
11月6日(水)公開講演会「当事者が語るデンマークのイノベーティブなリスキリング~職業訓練に労・使・政はどのように関わるか~デンマーク職業訓練政策の担当者を招いて」の開催報告
【日時】2024年11月6日(水)18:00~20:30
【会場】池袋キャンパス 太刀川記念館3階カンファレンスルーム(オンライン併用)
【参加人数】95名
【報告】
1.スティナ・ヴァング・イリアス氏(中央職業訓練委員会委員長)
「デンマーク職業訓練の諸委員会とアクター」
2.トマス・フェラン氏(デンマーク労働組合連合、職業教育訓練政策コンサルタント)
「労働組合からみたデンマークの職業訓練制度と労働市場モデル」
3.アント・ヴェスタゴー・ロウ氏(オルボー大学准教授)
「デンマークのデュアルモデル 学校と現場実習」

報告1 スティナ・ヴァング・イリアス氏

スティナ・ヴァング・イリアス氏は、デンマークの職業訓練システムにおける政治的アクターとその役割について報告した。職業訓練システムにおける政治的アクターとして、全国レベルでは「教育省」「中央職業訓練委員会」「専門業種委員会」が設置され、地方レベルでは「地域教育理事会」が設置されている。

全国委員会である中央職業訓練委員会は経営者団体、労働組合、職業専門学校組織、地方自治体、学生組織から選出されたメンバーから構成されている。その役割として、職業訓練プログラムの設置や廃止について教育省に提言すること、そのために必要な労働市場の分析などもする。専門業種委員会は職業訓練プログラムの内容、構成、決定に関して責任を負い、カリキュラムの策定や改訂にも責任を負う。また、労働市場のニーズの変化を把握、特定して教育省に報告書を作成すること、現場実習を行う企業の認定などもする。地域教育理事会は職業訓練に係る地域レベルでの調整をする。それは地域の状況や目標をカリキュラムに反映させることなどである。

以上のように職業訓練プログラムの開発、管理には多くのアクターが密接に連携していることが紹介された。

報告2 トマス・フェラン氏

トマス・フェラン氏はデンマークの職業訓練制度とデンマーク(労働市場)モデルについて報告した。

デンマーク職業訓練においては特に労使が大きな役割を果たしており、職業訓練の質の保証や財源の管理に関してソーシャルパートナー(労使)が協力し、多くの規定が労使協約によるものであることが示された。政府も職業訓練、労働市場の管理に大きな責任を負っている。デンマークの職業訓練制度の課題として「職業訓練志望者が少ないこと」「落第率の高さ」「熟練労働者の引退」「特定分野の熟練労働者の不足」「現場実習の受け入れ企業の不足」等が挙げられた。対策として「予算の増加」「基礎過程受講中の俸給」「人参と鞭の手法」「公立学校の改革」等が示された。

デンマークモデルについては、ソーシャルパートナーの役割の重要性が示され、同モデルが「団体交渉」「フレキシキュリティ」「三者合意」によって形成されていることが示された。これは、労働市場の規制には団体交渉が大部分を占めていることや、雇用の柔軟性と高いレベルの生活保障の両立、政労使が政策決定において密接に連携していることを意味する。

報告3 アント・ヴェスタゴー・ロウ氏

アント・ヴェスタゴー・ロウ氏はデンマークのデュアルモデルについて、その強みと課題、学校での座学と現場実習がどのように高い学習効果をもたらしているのかを報告した。この報告の特徴として、学習や実習を行う生徒の視点が盛り込まれていることがあげられる。

デンマークのデュアルモデルでは学校での座学が全体の三分の一、現場実習が三分の二を占めている。学校での座学が生徒に職業能力の基礎の獲得を、現場実習が実践に基づいた専門的職業能力の獲得をもたらす。そして生徒は資格を得ることで学校から雇用に円滑に移行できる。デュアルシステムの課題としては、学校と現場に係る様々なギャップがある。

生徒の視点について、学校で学んだ理論が現場実習で実践されることによって生徒の学習が促進された事例などが挙げられた。特に報告者は現場実習の効果を強調した。職業を実際に経験することによる、身体的、物質的な職業的専門性の感受や、責任を引き受ける感覚などが学習において重要であることが示された。

会場の様子

4月24日(水)公開講演会「公認会計士への道」の開催報告
2024年4月24日(水)午後7時より、本学池袋キャンパス8号館2階8202教室において、公開講演会「公認会計士への道」(公認会計士制度説明会)が例年通り開催された。本年度も昨年度と同様に、対面とオンラインのハイブリッド開催となった。対面は15名程度の参加者であったが、オンラインを併せると延べ60名以上の参加者を得て盛況であった。

羽山友紀子氏の講演

まず、司会(小澤)及び郭洋春経済研究所長のあいさつの後、日本公認会計士協会東京会広報委員会委員で、本学文学部フランス文学科卒業された羽山 友紀子氏(公認会計士)から公認会計士制度の説明があった。羽山氏は「公認会計士の仕事と魅力」と題して、公認会計士の使命、監査・税務・コンサルティングといった公認会計士の専門分野と活躍フィールド、試験制度の概要等についてお話くださった。また最後に現役公認会計士の声として、監査業務が拡大していることや、海外でも活躍できること等、いかに公認会計士が魅力的な仕事であるかを熱弁し、後輩たちに試験への挑戦を促された。

金沢信二朗氏の講演

次に、公認会計士試験に本学経済学部経済学科在学中に合格し、2024年3月に本学を卒業され、現在、EY新日本有限責任監査法人に勤務されている金沢 信二朗氏から、合格体験談をお話しいただいた。特に、大学生活と資格試験勉強の両立、試験勉強の仕方、試験合格後の日常など、参加者にとってとても有益な内容であった。金沢氏は、公認会計士試験にチャレンジする後輩たちに向けて熱いエールでご講演を締めくくられた。

山田浩一氏の講演

最後に山田浩一氏(公認会計士・立教公認会計士会会長)から、ベテラン公認会計士の視点に基づく、公認会計士という職業の魅力についてお話くださった。この仕事には、巷に言われるような「AIに仕事を奪われる」ような未来はなく、ぜひともこの試験にチャレンジしてほしいと、学生を激励していただいた。
講演会終了後には、対面参加の学生とオンライン参加の学生から、多くの質問が寄せられた。10分の質疑応答時間を予定していたが、それを大幅に超過し、講師の先生方には時間の許す限り後輩たちの質問にお答えいただいた。本年度も監査業務の繁忙期と開催時期が重なってしまったが、後輩のために貴重なお時間を割いて本学までお越しいただいた講師の先生方と日本公認会計士協会東京会各位には、改めてお礼申し上げたい。

お使いのブラウザ「Internet Explorer」は閲覧推奨環境ではありません。
ウェブサイトが正しく表示されない、動作しない等の現象が起こる場合がありますのであらかじめご了承ください。
ChromeまたはEdgeブラウザのご利用をおすすめいたします。

…