過去の講演会(2015年度~)経済研究所
2023年度 講演会等のお知らせ及び開催報告
会場の様子
【日時】2024年3月9日(金)14:00~17:30
【会場】池袋キャンパス 8号館8202教室
【参加人数】100名
【報告】
【会場】池袋キャンパス 8号館8202教室
【参加人数】100名
【報告】
- 平嶋 彰英氏(本学経済学部元特任教授、元総務省自治税務局長)
「体験的、戦後の地方向け国庫補助負担金制度改革史~第二次臨調以降の新自由主義的
経済財政運営の下での改革~」
- 森元 恒雄氏(本学経済学部元特任教授、自治省元官房総務審議官、元参議院議員)
「補助金の機能と課題」
- アンドリュー・デウィット氏(本学経済学部教授)
「財政の持続可能性とクリティカル・ミネラル集約型エネルギー転換の課題」
報告1 平嶋彰英氏(本学経済学部元特任教授)
第11回学術研究大会において、平嶋報告は日本の地方自治制度の特色は、1) 単一国家であり、中央・地方関係は地方自治制度である。2) 地方政府は2層制である。地方公共団体の数はそれなりに多い。3) 日本の地方公共団体は、公選された議員による一院制の議会をもち、予算の承認等のほか、法律の範囲内での立法権限を有している。4) 行政は、直接選挙で公選される首長制(大統領制)である。5) 地方公共団体が担任する事務・事業のウェイトが高い。
今後の展望としては、1)今後も進むと思われる地⽅への『なし崩し的』負担転嫁、2)実質的な地⽅⾃治体への負担転嫁につながる今後の⼈⼝減少と外国⼈労働者の流⼊により、実質移⺠国家化への対応が必要となるが、その社会的統合に必要な幼児教育・義務教育の充実、3)これらに先⾏して、地⽅税源の充実が必要ではないかという報告であった。
今後の展望としては、1)今後も進むと思われる地⽅への『なし崩し的』負担転嫁、2)実質的な地⽅⾃治体への負担転嫁につながる今後の⼈⼝減少と外国⼈労働者の流⼊により、実質移⺠国家化への対応が必要となるが、その社会的統合に必要な幼児教育・義務教育の充実、3)これらに先⾏して、地⽅税源の充実が必要ではないかという報告であった。
報告2 森元恒雄氏(本学経済学部元特任教授)
森元報告は、地方自治体に対する補助金として必要なのは、1)未完のままで終わった地方分権改革と三位一体改革、2)国と地方の財源配分は、国の仕組み(中央集権型か地方分権型か)がどうあるべきかを抜きにしては論じられない、3)国と地方の役割分担はどうあるべきか、4)国と地方の財源配分はどうあるべきか、5)地方交付税について改善すべき点は何か、6)国庫補助負担金について改善すべき点は何かについて報告された。
報告3 アンドリュー・デウィット(本学経済学部教授)
デウィット報告は、国際通貨基金が2023年に発表した「各国政府は気候変動対策目標の達成、財政の持続可能性、そして政策の政治的な実現可能性の間で、政策上のトリレンマに直面している。すなわち、ふたつの目標を追求すれば、第3の目標を部分的に犠牲にしてしまうのだ」と警告に対し、クリーンエネルギーと銅、ニッケルやレアアース等のクリティカル・ミネラルをめぐり、このトリレンマが日本でどのように顕在化しているかを検証した。そして、原子力等を含むクリーンエネルギーへの幅広いポートフォリオ・アプローチ、すなわちクリティカル・ミネラルの有効利用を最大化するアプローチが、このトリレンマを緩和できることを示した。
パネルディスカッションでは、三位一体改革による地方交付税減額の捉え方を巡り、フロアーも交え活発な意見交換がなされた。
【講演者】吉崎敏文氏(NEC執行役Corporate EVP兼CDO)
【日時】2023年12月22日(金)19:00~20:30
【場所】池袋キャンパス 8号館8303教室
【主催・共催】経済学研究所・人工知能科学研究科・経済学部
【参加者数】115名
【日時】2023年12月22日(金)19:00~20:30
【場所】池袋キャンパス 8号館8303教室
【主催・共催】経済学研究所・人工知能科学研究科・経済学部
【参加者数】115名
吉崎敏文氏の講演
NECのCDO兼Corporate EVP兼デジタルプラットフォームビジネスユニット長の吉崎敏文氏に「日本のAI技術の現状と課題—大学が果たすべき役割~日本の企業変革とAIのチャレンジ~」というテーマで講演いただいた。
まずDX市場環境について、刻々と変化する市場環境に対して迅速かつ適切な対応が必要であるとし、テクノロジー進化のスピードは今後10年間もさらに加速し、ハード・ソフト・ネットワークが同時に急激に進化するとの予測が示された。さらに生成AIについて、AIの歴史・AI進化の理由・生成AIによる価値創出などについての説明がなされたのち、NECによる生成AI開発の取組みが披露された。日本の技術のみで世界に挑むのではなく世界最先端の企業と協力して日本の強みを生かすことの重要性や、汎用的なAIの開発は先行企業が抜きんでているため特定分野のAIであれば後発企業でも勝機がある可能性などが主張された。
「学生は企業の実践プログラムに積極的に参加すべきである」、「3、4年生のうちにAIをしっかりと学んでおくべきである」、「文理の区別なく、自由に生きていくための学問としてのリベラルアーツが重要である」といった金言の数々は、きっと、聴講した学生の胸に刻まれたに違いないであろう。
なお、講演に加えて、NECが進める戦略的な大規模言語モデルによる生成AI「cotomi(コトミ)」のデモンストレーションもおこなわれた。汎用AIと差別化した業種・業務特化モデルによる生成AIとして、日本で圧倒的な地位の確立と世界展開への布石とする事業構想が語られた。
まずDX市場環境について、刻々と変化する市場環境に対して迅速かつ適切な対応が必要であるとし、テクノロジー進化のスピードは今後10年間もさらに加速し、ハード・ソフト・ネットワークが同時に急激に進化するとの予測が示された。さらに生成AIについて、AIの歴史・AI進化の理由・生成AIによる価値創出などについての説明がなされたのち、NECによる生成AI開発の取組みが披露された。日本の技術のみで世界に挑むのではなく世界最先端の企業と協力して日本の強みを生かすことの重要性や、汎用的なAIの開発は先行企業が抜きんでているため特定分野のAIであれば後発企業でも勝機がある可能性などが主張された。
「学生は企業の実践プログラムに積極的に参加すべきである」、「3、4年生のうちにAIをしっかりと学んでおくべきである」、「文理の区別なく、自由に生きていくための学問としてのリベラルアーツが重要である」といった金言の数々は、きっと、聴講した学生の胸に刻まれたに違いないであろう。
なお、講演に加えて、NECが進める戦略的な大規模言語モデルによる生成AI「cotomi(コトミ)」のデモンストレーションもおこなわれた。汎用AIと差別化した業種・業務特化モデルによる生成AIとして、日本で圧倒的な地位の確立と世界展開への布石とする事業構想が語られた。
郭研究所長の挨拶
会場の様子
2023年4月26日(水)に立教大学池袋キャンパス8号館8202教室において、公開講演会「公認会計士への道」が例年通り開催された。本年度も昨年度と同様に、対面とオンラインのハイブリッド開催となったことから、延べ60名以上の参加者を得て盛況となった。
まず、司会及び郭洋春経済研究所長のあいさつの後、本学理学部化学科卒業された飯塚幸子氏(公認会計士)から公認会計士制度の説明があった。飯塚氏は公認会計士の使命や専門分野と活躍フィールドである監査・税務・コンサルティングについてお話くださった。また最後に試験制度の説明と、現役公認会計士の声として、女性公認会計士としての立場からも、いかに公認会計士が魅力的な仕事であるかを熱く語られた。
まず、司会及び郭洋春経済研究所長のあいさつの後、本学理学部化学科卒業された飯塚幸子氏(公認会計士)から公認会計士制度の説明があった。飯塚氏は公認会計士の使命や専門分野と活躍フィールドである監査・税務・コンサルティングについてお話くださった。また最後に試験制度の説明と、現役公認会計士の声として、女性公認会計士としての立場からも、いかに公認会計士が魅力的な仕事であるかを熱く語られた。
郭洋春研究所長の挨拶
飯塚幸子氏の講演
次に、公認会計士試験に本学経営学部経営学科在学中に合格し、2023年3月に本学を卒業され、現在、有限責任あずさ監査法人に勤務されている千葉晃平氏から、特に、大学生活と公認会計士の試験のための勉強との両立や勉強の仕方についてお話しいただいた。千葉氏は、特に、徹底的なスケジュール管理と復習の重要性を強調された。また、今後、公認会計士試験にチャレンジする後輩たちに向けてエールもお送りいただいた。
千葉晃平氏の講演
山田浩一氏の講演
最後に山田浩一氏(公認会計士・立教公認会計士会会長)が、長年にわたる業務経験を有するベテラン公認会計士の立場から、公認会計士という職業の魅力をお話しされた。必ずしも全員が合格するわけではないとしても、この試験にチャレンジすることの重要性を熱く語られ、学生を激励していただいた。講演会終了後には、対面参加の学生とオンライン参加の学生から、多くの質問が寄せられ、残念ながらすべての質問にご回答いただくには時間が足りなかったが、講師の先生方には時間の許す限り後輩たちの質問にお答えいただいた。監査業務の繁忙期にもかかわらず、後輩のためにご協力いただいた講師の先生方と日本公認会計士協会東京会各位には、改めてお礼申し上げたい。
2022年度 講演会等のお知らせ及び開催報告
立教大学経済研究所主催の第10回学術研究大会「150年目の鉄道の現状と課題」が、2023年3月11日(土)に池袋キャンパス8202教室において、午後2時より対面形式で開催された。本大会は、本学経済学部・大学院経済学研究科にゆかりのある研究者(卒業生、名誉教授、助手・助教経験者など)が集う研究集会であり、1年に1度、3月に開催されている。第10回大会は、新型コロナ感染症(COVID‑19)の活動制限指針緩和にともない、2018年度の第6回大会以来の対面開催となった。
大会の冒頭、主催の経済研究所を代表して所長の池田毅氏(本学経済学部教授)による開会挨拶が行われた。つづいて、本大会のテーマ「150年目の鉄道の現状と課題」の企画の中心となり、当日の司会を担当された老川慶喜氏(本学名誉教授)が本企画の経緯と趣旨について説明された。老川氏は、日本で最初に鉄道が開業したのが1872年であり、2022年は鉄道開業150年の記念の年にあたり、新聞、テレビ、雑誌などで鉄道にかかわるさまざまな企画が催されたことに触れ、祝賀ムードとは異なる視点で現在の日本鉄道業が直面している課題や問題を考える必要があると、他の鉄道開業150年とは異なる本企画の趣旨を力強く述べられた。
大会の冒頭、主催の経済研究所を代表して所長の池田毅氏(本学経済学部教授)による開会挨拶が行われた。つづいて、本大会のテーマ「150年目の鉄道の現状と課題」の企画の中心となり、当日の司会を担当された老川慶喜氏(本学名誉教授)が本企画の経緯と趣旨について説明された。老川氏は、日本で最初に鉄道が開業したのが1872年であり、2022年は鉄道開業150年の記念の年にあたり、新聞、テレビ、雑誌などで鉄道にかかわるさまざまな企画が催されたことに触れ、祝賀ムードとは異なる視点で現在の日本鉄道業が直面している課題や問題を考える必要があると、他の鉄道開業150年とは異なる本企画の趣旨を力強く述べられた。
第1報告「ドイツから見た日本の鉄道150年」桜井徹氏(日本大学名誉教授)
第1報告の桜井徹氏(日本大学名誉教授)では、「ドイツから見た日本の鉄道150年」と題して、ドイツ鉄道業と比較した日本鉄道業の特徴を経営形態に焦点をあてた講演がなされた。報告では、両国の鉄道業に関して,長期的な視点から19世紀~20世紀初頭の鉄道国有化,第二次世界大戦後の経営自立化の過程,1980年代以降に本格化する鉄道改革が論じられた。特に先行して展開した日本の国鉄分割・民営化をドイツがどのように捉えていたのか、両国の鉄道事業に通じた桜井氏の緻密な分析が展開され,最後に現在のJR体制の抱える「ひずみ」、「問題」を解決するための、JR改革案が示された。第2報告の安藤陽氏(埼玉大学名誉教授、本学経済学部・経済学研究科出身)による「国鉄からJRへ、そしてこれからの日本の鉄道」では、JRローカル線問題からみた鉄道ネットワークの現状と課題が報告された。安藤氏の報告では、現在のJR体制の矛盾がローカル線問題に集中的に現れているとして、鉄道ネットワークが縮小していくなかで、JRがローカル線をどのように位置付けていくのか、さらに鉄道ネットワークが維持できるのかが論じられた。結論として、安藤氏は、鉄道ネットワークは社会的な基盤、インフラであり、公的資金投入の下で、ローカル線を含む鉄道輸送サービスの維持と地域社会の活性化を図るべきではないかとの提言で報告を結ばれた。第3報告では、「事故と安全」研究において、日本の第一人者である安部誠治氏(関西大学教授)より、「事故と安全から見た日本の鉄道」が論じられた。報告では、まず1991年の信楽高原鉄道事故、2005年の福知山線事故を振り返りつつ、150年の日本の鉄道事故全体を概観され、鉄道の安全、鉄道事故の実態、さらに運輸事故調査の整備過程など、多岐にわたる論点について、安部氏が深い学識と経験から論じられた。そして鉄道の安全が鉄道会社だけでなく、利用者(市民)の協力が不可欠であり、鉄道に関わる全ての関係者の安全意識の向上が鉄道安全の大きな課題であると報告を締めくくられた。
第2報告「国鉄からJRへ、そしてこれからの日本の鉄道」安藤陽氏(埼玉大学名誉教授)
第3報告「事故と安全から見た日本の鉄道」安部誠治氏(関西大学教授)
3人の報告後に一旦休憩をとり、続けて恩田睦氏(明治大学准教授・本学経済学研究科出身)と其田茂樹氏(地方自治総合研究所)によるコメントが行われ、報告者からのリプライ後に参加者も交えた質疑応答の時間が取られた。なお、当日の大会の様子については、『経済研究所年報2023』に報告、コメント、質疑応答を収録した講演録が掲載される予定である。
コメンテーター 恩田睦氏(明治大学准教授)
コメンテーター 其田茂樹氏(地方自治総合研究所)
会場の様子
最後に、経済学部長の藤原新氏より閉会の挨拶として、参加者の皆様、講演された先生方、大会の準備に尽力された方々への感謝の意が述べられ、当初の予定を30分ほど過ぎた18時に盛況のうちに第10回学術研究大会の幕が閉じられた。
このイベントの開催報告はありません
コロナ禍で中断されていた公開講演会「公認会計士への道」が2022年4月27日(水)に8号館8202教室において、例年通り開催された。まず、ご協力いただいた関係各位にお礼申し上げたい。2020年、2021年とコロナ禍で開催できなかったこと、また、今回は初めての試みとして、対面とオンラインのハイブリッド開催となったことから延べ80名以上の参加者を得て盛況となった。
髙橋尚彦氏の講演
司会及び池田経済研究所長のあいさつの後、高橋尚彦氏(公認会計士・日本公認会計士協会東京会 広報委員会委員)より、ご自身の経験を踏まえつつ、公認会計士協会が作成したパンフレットに沿って公認会計士制度についての解説があった。公認会計士としての業務だけでなく、受験指導をされた経験もあり、懇切丁寧で明瞭なご説明をいただいた。
今田隆礼氏の講演
次に、本学経営学部国際経営学科を2021年3月卒業に卒業され、現在、有限責任監査法人トーマツに勤務されている今田隆礼氏から、特に、在学中合格の過程についてお話しいただいた。授業がオンラインであったことをうまく活用し、どのように試験勉強をしていたのかを中心にご説明いただいた。ご自身の受験生時代を振り返りつつ、今後、公認会計士試験にチャレンジする後輩たちに向け、最後にエールもお送りいただいた。
山田浩一氏の講演
また、最後に山田浩一氏(公認会計士・立教公認会計士会会長)からも、数十年にわたる業務経験を有するベテラン公認会計士の立場から、公認会計士という職業の魅力と可能性を語っていただいた。これから公認会計士試験にチャレンジすることの意義をお話しいただき、最後に学生に激励していただいた。講演会終了後には、対面参加の学生とオンライン参加の学生から、多くの質問が寄せられた。特に、オンラインからの質問が多く、すべての質問にご回答いただくには時間が足りない状況となった。
監査業務の繁忙期にもかかわらず、後輩のためにご協力いただいた講師の先生方と日本公認会計士協会東京会各位には、改めてお礼申し上げたい。
2021年度 講演会等のお知らせ及び開催報告
立教大学経済研究所主催の第9回学術研究大会「コロナ禍の財政と社会保障」が、2022年3月18日(金)午後2時よりオンライン形態で開催された。本大会は、本学経済学部・大学院経済学研究科にゆかりのある研究者(卒業生、名誉教授、助手・助教経験者など)が集う研究集会であり、1年に1度この時期に開催されている。今年度の第9回大会は、新型コロナ感染症に関わる大学の活動制限指針に従い、昨年度に引き続き、オンラインでの開催となった。
冒頭、主催者を代表して経済研究所長の池田毅氏(本学経済学部教授)による開会挨拶が行われた。従来この学術大会では、ある特定の研究テーマに絞り、そのテーマと関わりの深い先生方にご講演いただく、という形を取っていたが、今回のコロナ禍において、感染症対策と経済活動のトレードオフはいわば国民的関心事項ともなっており、経済研究所としてもこれを取り上げないわけにはいかないであろうとの判断に至り、今回のテーマ設定へ至ったことが説明された。
4つの講演の進行は、最初に、本学経済学部教授の池上岳彦氏より「コロナ対策の財政政策をめぐる日米の比較」と題して、日米それぞれの財政状況とマクロ経済状況について講演がなされ、わが国におけるコロナ対策給付の予算過程の検証の必要性やアフターコロナを見据えた財政再建・税制改革の問題が指摘された。つぎに、本学経済学部准教授の安藤道人氏より「コロナ禍と三層のセーフティネット」と題する講演において、わが国のセーフティネットの三層構造について解説がなされ、コロナ禍において利用が急増した第二層のセーフティネットについての考察や問題提起がなされた。つづいて、埼玉大学人文社会科学研究科准教授の大津唯氏より「コロナ禍で顕在化した医療提供体制の課題と今後の展望」と題して、わが国でなぜ病床逼迫を防げなかったのか、今後の救急医療体制の強化のために必要なことはなにか、について講演をいただいた。最後に、駒澤大学経済学部准教授の田中聡一郎氏より「コロナ感染拡大と格差」と題して、コロナショック前後の経済指標、コロナ禍による所得格差ならびにわが国の政策対応が論じられ、2020年はコロナ禍による労働市場悪化と経済的支援という二つの相反する要因があり、それらのインパクトの全体像を把握するためには、現時点では発表されていない所得分配に関する政府統計の調査結果を待つ必要があることが指摘された。
4つの講演後は、オンラインでの参加者を交えた質疑応答が行われた。当日のオンライン会場では常時60名から70名の方々にご参加いただいた。
なお、当日の大会の様子については、 2022年度春学期に経済研究所ウェブサイトで公開予定の経済研究所年報に記録される予定であるので、当日の議論の詳細については、そちらをご覧いただきたい。
最後に、経済学部長の藤原新氏より閉会の挨拶として、参加者の皆様、講演された先生方、大会の準備に尽力された方々への感謝の意が述べられた。
以上
冒頭、主催者を代表して経済研究所長の池田毅氏(本学経済学部教授)による開会挨拶が行われた。従来この学術大会では、ある特定の研究テーマに絞り、そのテーマと関わりの深い先生方にご講演いただく、という形を取っていたが、今回のコロナ禍において、感染症対策と経済活動のトレードオフはいわば国民的関心事項ともなっており、経済研究所としてもこれを取り上げないわけにはいかないであろうとの判断に至り、今回のテーマ設定へ至ったことが説明された。
4つの講演の進行は、最初に、本学経済学部教授の池上岳彦氏より「コロナ対策の財政政策をめぐる日米の比較」と題して、日米それぞれの財政状況とマクロ経済状況について講演がなされ、わが国におけるコロナ対策給付の予算過程の検証の必要性やアフターコロナを見据えた財政再建・税制改革の問題が指摘された。つぎに、本学経済学部准教授の安藤道人氏より「コロナ禍と三層のセーフティネット」と題する講演において、わが国のセーフティネットの三層構造について解説がなされ、コロナ禍において利用が急増した第二層のセーフティネットについての考察や問題提起がなされた。つづいて、埼玉大学人文社会科学研究科准教授の大津唯氏より「コロナ禍で顕在化した医療提供体制の課題と今後の展望」と題して、わが国でなぜ病床逼迫を防げなかったのか、今後の救急医療体制の強化のために必要なことはなにか、について講演をいただいた。最後に、駒澤大学経済学部准教授の田中聡一郎氏より「コロナ感染拡大と格差」と題して、コロナショック前後の経済指標、コロナ禍による所得格差ならびにわが国の政策対応が論じられ、2020年はコロナ禍による労働市場悪化と経済的支援という二つの相反する要因があり、それらのインパクトの全体像を把握するためには、現時点では発表されていない所得分配に関する政府統計の調査結果を待つ必要があることが指摘された。
4つの講演後は、オンラインでの参加者を交えた質疑応答が行われた。当日のオンライン会場では常時60名から70名の方々にご参加いただいた。
なお、当日の大会の様子については、 2022年度春学期に経済研究所ウェブサイトで公開予定の経済研究所年報に記録される予定であるので、当日の議論の詳細については、そちらをご覧いただきたい。
最後に、経済学部長の藤原新氏より閉会の挨拶として、参加者の皆様、講演された先生方、大会の準備に尽力された方々への感謝の意が述べられた。
以上
このイベントの開催報告はありません。
2020年度 講演会等のお知らせ及び開催報告
このイベントの開催報告はありません。
立教大学経済研究所主催の第8回学術研究大会「コロナ禍における新たな国際秩序の模索」が、2021年3月6日(土)午後2時よりオンライン(Zoomウェビナー)により開催された。
本学術大会は、本学経済学部・大学院経済学研究科にゆかりのある研究者(卒業生、名誉教授、助手・助教経験者など)が集う研究集会であり、1年に1度この時期に開催されている。しかしながら、昨年度の第7回大会は、新型コロナ感染拡大による非常事態宣言の発出により、中止することを余儀なくされた。本学術大会は一般にも公開され、本学経済学部・経済学研究科の研究成果を社会に還元するものであるが、同時にゆかりのある研究者との研究上の交流を通じて懇親を深め、経済学部・経済学研究科の研究・教育の向上を図ることも目的にしている。これまでの学術大会は、直接対面する研究集会とその後に開催される懇親会において旧交を温め、また新たな出会いもある極めて有意義なものであった。第8回大会は対面での開催は叶わないが、何とか実施したいという関係各位の熱意、尽力によりオンラインで開催が実現された。
本学術大会は、本学経済学部・大学院経済学研究科にゆかりのある研究者(卒業生、名誉教授、助手・助教経験者など)が集う研究集会であり、1年に1度この時期に開催されている。しかしながら、昨年度の第7回大会は、新型コロナ感染拡大による非常事態宣言の発出により、中止することを余儀なくされた。本学術大会は一般にも公開され、本学経済学部・経済学研究科の研究成果を社会に還元するものであるが、同時にゆかりのある研究者との研究上の交流を通じて懇親を深め、経済学部・経済学研究科の研究・教育の向上を図ることも目的にしている。これまでの学術大会は、直接対面する研究集会とその後に開催される懇親会において旧交を温め、また新たな出会いもある極めて有意義なものであった。第8回大会は対面での開催は叶わないが、何とか実施したいという関係各位の熱意、尽力によりオンラインで開催が実現された。
開会挨拶 佐藤有史(経済学部教授・経済研究所長)
冒頭、主催者を代表して本学経済研究所長の佐藤有史氏(本学経済学部教授)による開会挨拶が行われ、戦争はさしたる理由もないのにも関わらず開戦されているという、グレアム・アリソン著/藤原朝子訳『米中戦争前夜』(ダイヤモンド社、2017年)を引き合いに、第8回大会のテーマ設定の経緯とその重要性が説明された。その後、司会の湊昭宏氏(本学経済学部教授・経済研究所副所長)のテーマの主旨説明、厳成男氏(本学経済学部教授)、櫻井公人氏(本学経済学部教授)の研究報告が行われた。さらに、司会者、一般参加者を交えた質疑応答が行われた。例年、名誉教授の先生にも研究報告をして頂いているが、今回は運営上の都合によりに断念せざるを得なかった。当日は、本学経済学部の教員および退職者の他、本学大学院経済学研究科の修了生、一般参加者など128名がZoomウェビナーを通じて視聴頂いた。
司会・基調報告「コロナ禍とアジアから見る国際秩序の変容」/湊照宏(経済学部教授・経済研究所副所長)
まず、司会の湊教授により「コロナ禍とアジアから見る国際秩序の変容」と題して、本日の学術大会の主旨が説明された。英国から米国の覇権交代は友好国間であったのに対して、米国と中国は対抗関係にあることが述べられた。そして、そのような中でアジア諸国は困難な選択を迫られ、日本もその例外ではないことから、本日の報告は非常に意義深いものであることが示された。
基調講演「コロナ禍の中の米中覇権戦争 —「戦役」で勝利した中国の自信」/厳成男(経済学部教授)
第一報告者の厳教授の専攻は中国経済論であり、「コロナ禍の中の米中覇権戦争:「戦疫」で勝利した中国の自信」と題して報告が行われた。日本における米中関係の報道は、日本が米国の同盟国であることから、米国側の視点に立ったものが殆どであることが指摘された。日本人は、日本の報道は客観的であると思いがちであるが、本報告では中国側の視点が紹介され、非常に興味深い報告であった。中国は高い経済成長により中国式の発展様式に自信を深め、覇権は望んでいないものの中国の発展を制約するアメリカ主導の既存体制は修正される必要があると考えていることが指摘された。特に、コロナ禍における感染拡大の抑制の成功は、市場的調整(米国)よりも国家的調整(中国)が優越性を持つと考えていることが指摘された。そして、覇権争いの背景と進展においては、中国における経済成長の維持とその規模の拡大が重要な意味をもつとの見解が示された。
基調講演「米中の覇権争いとグローバル資本主義のゆくえ」/櫻井公人(経済学部教授)
第二報告者の櫻井教授の専攻はグローバル政治経済学であり、「米中の覇権争いとグローバル資本主義のゆくえ」と題して報告が行われた。櫻井教授は、米中覇権争いを1970年代以降に日本が経験した経済安全保障問題から読み解く。例えば、石油危機により、備蓄が進み、非OPEC原油や代替エネルギーの開発が進んだ。その結果、原油価格は下落し、石油を武器に使ったアラブ諸国も損害を被ったということである(制裁の反作用)。そして、1990年代にはグローバリゼーション(経済の効率化)が推進されたが、その行き過ぎは脆弱性やリスクを孕むものであったと指摘された。コロナ禍以前から燻っていた反グローバリズムが、コロナ禍により顕在化したと見るべきだということである。さらに、米中覇権争いの要因として、アメリカの関与政策による中国の経済的地位の向上が指摘された。そして、米中は共に国内に深刻な格差と分断を抱えており、国内統一のための強硬な外交によって米中対立の激化が懸念され、それが日本にも大きな影響を与えるという見解が示された。
当日の様子
続く質疑応答では、司会者からの質問の他、一般参加者からも質問があり、予定時間を超過した活発な議論が展開された。例えば、基軸通貨国としての米国の地位、金融戦争の形態やその可能性についての質問があった。厳教授、櫻井教授からは、ともに人民元が基軸通貨になることは困難であると指摘された。そして、金融戦争について、厳教授からは相互の資本規制、中国のドル決済禁止などが、櫻井教授からはドルが基軸通貨である限り制裁は可能だが、近い将来にその座が交代する可能性は低いとの見解が示された。
最後に、経済学部長の内野一樹氏より、視聴者の皆様、佐藤所長をはじめ学術大会の開催に尽力された方々、報告者の先生方に感謝の意が述べられた。そして、第9回大会を対面で開催できるよう最大限努力するという言葉で締め括られ、閉会となった。
最後に、経済学部長の内野一樹氏より、視聴者の皆様、佐藤所長をはじめ学術大会の開催に尽力された方々、報告者の先生方に感謝の意が述べられた。そして、第9回大会を対面で開催できるよう最大限努力するという言葉で締め括られ、閉会となった。
このイベントの開催報告はありません。
2019年度 講演会等のお知らせ及び開催報告
2019年4月24日(水)に11号館3階A301教室において、公開講演会「公認会計士への道」が例年通り開催された。昨年実施した際も参加者が増えたが、本年度はさらに参加者が増加し、56名の参加者を得て盛況となった。
司会及び佐藤経済研究所長のあいさつの後、日本公認会計士協会が作成したビデオ「コウニンカイケイシってナンダ!?」の上映が行われた。公認会計士の業務について、監査、コンサルティング、組織内会計士という3つに分けて説明をするものであった。内容は大変わかりやすく簡潔にまとまっており、また、コミカルな部分では会場から笑いも起こった。
その後、本学文部フランス文学科を卒業された羽山友紀子氏(公認会計士・日本公認会計士協会東京会 広報委員会委員)より、ご自身の経験を踏まえつつ、公認会計士協会が作成したパンフレットに沿って公認会計士制度についての解説があった。昨年と同様に、物腰が柔らかく、口調もゆっくりと丁寧で、参加者に説得力を持ってお伝えいただいた。
次に、本学経済学部会計ファイナンス学科を卒業後、昨年合格した、現在、有限責任あずさ監査法人に勤務されている駿河佳奈氏(2018年卒)から、どのように試験勉強をしていたのかに加えて、現在の仕事内容や公認会計士の魅力等についてお話をいただいた。終始にこやかに気負わずに自然体で自分の体験を伝えられ、最後に参加者にエールもお送りいただいた。
また、泉澤大介氏(公認会計士・立教公認会計士会)からも、ベテラン公認会計士の立場から、公認会計士という職業の魅力を多角的に語っていただいた。試験勉強は確かに大変であるかもしれないが、絶対に無駄にはならないので、公認会計士試験にぜひチャレンジしてほしいという激励と共に締めくくられた。例年通り、講演会終了後の個別質問の時間には、行列でき、各講師から参加者に対して多くの示唆を与えていただいた。
各講師に与えられた時間は短く、語りつくせないご様子ではあったが、参加者アンケートの結果を確認すると、とても評価が高く、必要なことは十分に伝わったと考えられるので、ぜひ今後も諸氏のご協力のもと、開催を継続していきたい。
監査業務の繁忙期にもかかわらず、後輩のためにご協力いただいた講師の先生方には、篤くお礼申し上げたい。
司会及び佐藤経済研究所長のあいさつの後、日本公認会計士協会が作成したビデオ「コウニンカイケイシってナンダ!?」の上映が行われた。公認会計士の業務について、監査、コンサルティング、組織内会計士という3つに分けて説明をするものであった。内容は大変わかりやすく簡潔にまとまっており、また、コミカルな部分では会場から笑いも起こった。
その後、本学文部フランス文学科を卒業された羽山友紀子氏(公認会計士・日本公認会計士協会東京会 広報委員会委員)より、ご自身の経験を踏まえつつ、公認会計士協会が作成したパンフレットに沿って公認会計士制度についての解説があった。昨年と同様に、物腰が柔らかく、口調もゆっくりと丁寧で、参加者に説得力を持ってお伝えいただいた。
次に、本学経済学部会計ファイナンス学科を卒業後、昨年合格した、現在、有限責任あずさ監査法人に勤務されている駿河佳奈氏(2018年卒)から、どのように試験勉強をしていたのかに加えて、現在の仕事内容や公認会計士の魅力等についてお話をいただいた。終始にこやかに気負わずに自然体で自分の体験を伝えられ、最後に参加者にエールもお送りいただいた。
また、泉澤大介氏(公認会計士・立教公認会計士会)からも、ベテラン公認会計士の立場から、公認会計士という職業の魅力を多角的に語っていただいた。試験勉強は確かに大変であるかもしれないが、絶対に無駄にはならないので、公認会計士試験にぜひチャレンジしてほしいという激励と共に締めくくられた。例年通り、講演会終了後の個別質問の時間には、行列でき、各講師から参加者に対して多くの示唆を与えていただいた。
各講師に与えられた時間は短く、語りつくせないご様子ではあったが、参加者アンケートの結果を確認すると、とても評価が高く、必要なことは十分に伝わったと考えられるので、ぜひ今後も諸氏のご協力のもと、開催を継続していきたい。
監査業務の繁忙期にもかかわらず、後輩のためにご協力いただいた講師の先生方には、篤くお礼申し上げたい。
於:池袋キャンパス 11号館地下1階 AB01教室
立教大学池袋キャンパス11号館において、山口周氏と山口揚平氏の講演および対談が行われた。大変多岐にわたるお話だったため適切にまとめることが困難ではあるが、ここではできるだけ簡潔に要点を列挙していきたい。
まず、山口周氏から「AI時代の価値」について、「過剰なモノはどんどん価値がなくなり、希少なモノにどんどん価値がでてくる」というご指摘があった。より具体的には、価値がなくなっていくものとして、「正解、モノ、機能・利便性、データ、テクノロジー」があり、逆に価値があがるものとして、「問題、意味、情緒、ストーリー、共感、 懐かしさ・ノスタルジー」があるとされた。また、「役に立つ」が評価されず、個人にとって「意味がある」ものが重視される時代にますますなっていくという。「役に立つが意味がない」ものの典型例としてGoogleの検索サービスを挙げ、そのようなものは競合相手がいたとしても最終的に1つに収斂していくので、日本企業がそこで勝負することは避けるべきであるという趣旨のお話をされた。多くの人にとって「役に立たない」かもしれないが、個人にとって「意味がある」ものを生み出していく必要があるということであった。
次に、山口楊平氏から、「物事の本質を見極めなければ何も動かない、かわらない」、「演繹でもない、帰納でもない、直感でもないアブダクティブアプローチによって本質を掴み取ることができる」、「同時多発的展開」、「AIが計算する、人間が思考する」など多岐にわたるお話があった。たとえば、「同時多発的展開」とは、どこかの国で成功したものやサービスを順次他国で販売したりする方法ではなく、Netflixの全世界同時配信のように、国境や時間にとらわれず、世界中で同時展開するサービスやものが売れていく時代になるということである。さらに、未来を洞察するためには、歴史を教養として知っておく必要があることも強調された。
上記以外にも、お二人から多くの示唆に富むお話をお伺いできたが、それらを踏まえて、次に対談に移った。まずは「教養ブーム」について、すぐに「役に立たない」と考えられてきた哲学や文学が希少になり評価される時代になっている一方で、それがブームになるとコモディティ化して逆に価値がなくなってしまうという。次に「歴史」的な見方について論じられた。例えば、歴史的には金利がマイナスの時代は長く存在したのだが、それを知らないと「マイナス金利は異常」と考えてしまう。しかし、歴史を知り、常識と考えられていることを相対化して捉えなおすことで、新しいことが見えてくる。
さらに、山口揚平氏が、「意識」について強調された。「意識」と「情報」は結合していて、そこに人間はメモリの80%を使っている。そうなると意識は使えなくなり、人はこれまで通りのことを繰り返すだけになる。情報は炭水化物と同じで、摂りすぎは問題を起こしやすく、思考しにくくなるので、情報から意識を解放してあげる必要がある。つまり、良質な情報を摂取し、抽象度を高くして「意識の可動領域」を増やすことが必要であるという。平成の時代とは違って、令和の時代は、意識のcontrollability(可動領域)を高める必要がある。
学生に対するメッセージとして、「パッケージにコンテンツが従う」という意味では、「〇〇業界に入る」というのを目指すのはやめたほうが良いと喝破された。「〇〇業界」がパッケージに当り、それに合わせた「仕事」をしてしまうと、「パッケージ」に意味がなくなった時に、本人にも将来がないということである。
質疑応答では、「マインドフルネス」が流行っていることについて主に揚平氏に質問が出された。氏は、「マインド」はノイズであり、「マインド」を無くすべきであり、本来は「マインドレスネス」ではないか、また、「自己を減じて全体とつながって個に還ってくる」という考え方をすべきではないかということであった。次に留学生から、「私の周りでは仕事が楽しいと言っている人がいないが、『楽しんで仕事をする』ということはどういうことか。」という質問があった。これに対して周氏は、平成時代にリソースのある大企業がベンチャー企業であるGAFAやYahooに負けてしまった最大の原因は、「モチベーション」がなかったことである。つまり、日本企業では「好きなことは仕事にできない」「上司から言われたからやっている」という社会人が多く、それではある程度のところまでは到達できても、これからも「モチベーション」のあるメンバーで構成される会社に勝てるはずはない。だから30代あるいは早ければ20代から「好きなことを仕事にする」、モチベーションを持って仕事ができることを意識したほうが良いということであった。質疑応答では、「マインドフルネス」が流行っていることについて主に揚平氏に質問が出された。氏は、「マインド」はノイズであり、「マインド」を無くすべきであり、本来は「マインドレスネス」ではないか、また、「自己を減じて全体とつながって個に還ってくる」という考え方をすべきではないかということであった。次に留学生から、「私の周りでは仕事が楽しいと言っている人がいないが、『楽しんで仕事をする』ということはどういうことか。」という質問があった。これに対して周氏は、平成時代にリソースのある大企業がベンチャー企業であるGAFAやYahooに負けてしまった最大の原因は、「モチベーション」がなかったことである。つまり、日本企業では「好きなことは仕事にできない」「上司から言われたからやっている」という社会人が多く、それではある程度のところまでは到達できても、これからも「モチベーション」のあるメンバーで構成される会社に勝てるはずはない。だから30代あるいは早ければ20代から「好きなことを仕事にする」、モチベーションを持って仕事ができることを意識したほうが良いということであった。
最後に、お二人からメッセージをいただいた。周氏からは「世間は自分の信じる社会からはみでる人を恐れるから、皆さんをだまそうとするが、社会に騙されないために教養(知的なタフネス)を身に付けてほしい」ということ、揚平氏からは「アップデートしかしない会社はもう続かない。次元が変わった令和時代では、平成時代のトラックはもう終わっている。新しいトラックに乗りなさい。そして、日本人の得意な部分を活かすとすれば、今後はロボティックスが有望であろう。」とのことであった。公開講演会には予想以上に多くの方にご出席いただき、お二人には感謝申し上げるとともに、お話しいただいた内容が少しでも多くの方に届き、新しい時代を生きるための糧となれば主催者としては望外の喜びであります。
立教大学池袋キャンパス11号館において、山口周氏と山口揚平氏の講演および対談が行われた。大変多岐にわたるお話だったため適切にまとめることが困難ではあるが、ここではできるだけ簡潔に要点を列挙していきたい。
まず、山口周氏から「AI時代の価値」について、「過剰なモノはどんどん価値がなくなり、希少なモノにどんどん価値がでてくる」というご指摘があった。より具体的には、価値がなくなっていくものとして、「正解、モノ、機能・利便性、データ、テクノロジー」があり、逆に価値があがるものとして、「問題、意味、情緒、ストーリー、共感、 懐かしさ・ノスタルジー」があるとされた。また、「役に立つ」が評価されず、個人にとって「意味がある」ものが重視される時代にますますなっていくという。「役に立つが意味がない」ものの典型例としてGoogleの検索サービスを挙げ、そのようなものは競合相手がいたとしても最終的に1つに収斂していくので、日本企業がそこで勝負することは避けるべきであるという趣旨のお話をされた。多くの人にとって「役に立たない」かもしれないが、個人にとって「意味がある」ものを生み出していく必要があるということであった。
次に、山口楊平氏から、「物事の本質を見極めなければ何も動かない、かわらない」、「演繹でもない、帰納でもない、直感でもないアブダクティブアプローチによって本質を掴み取ることができる」、「同時多発的展開」、「AIが計算する、人間が思考する」など多岐にわたるお話があった。たとえば、「同時多発的展開」とは、どこかの国で成功したものやサービスを順次他国で販売したりする方法ではなく、Netflixの全世界同時配信のように、国境や時間にとらわれず、世界中で同時展開するサービスやものが売れていく時代になるということである。さらに、未来を洞察するためには、歴史を教養として知っておく必要があることも強調された。
上記以外にも、お二人から多くの示唆に富むお話をお伺いできたが、それらを踏まえて、次に対談に移った。まずは「教養ブーム」について、すぐに「役に立たない」と考えられてきた哲学や文学が希少になり評価される時代になっている一方で、それがブームになるとコモディティ化して逆に価値がなくなってしまうという。次に「歴史」的な見方について論じられた。例えば、歴史的には金利がマイナスの時代は長く存在したのだが、それを知らないと「マイナス金利は異常」と考えてしまう。しかし、歴史を知り、常識と考えられていることを相対化して捉えなおすことで、新しいことが見えてくる。
さらに、山口揚平氏が、「意識」について強調された。「意識」と「情報」は結合していて、そこに人間はメモリの80%を使っている。そうなると意識は使えなくなり、人はこれまで通りのことを繰り返すだけになる。情報は炭水化物と同じで、摂りすぎは問題を起こしやすく、思考しにくくなるので、情報から意識を解放してあげる必要がある。つまり、良質な情報を摂取し、抽象度を高くして「意識の可動領域」を増やすことが必要であるという。平成の時代とは違って、令和の時代は、意識のcontrollability(可動領域)を高める必要がある。
学生に対するメッセージとして、「パッケージにコンテンツが従う」という意味では、「〇〇業界に入る」というのを目指すのはやめたほうが良いと喝破された。「〇〇業界」がパッケージに当り、それに合わせた「仕事」をしてしまうと、「パッケージ」に意味がなくなった時に、本人にも将来がないということである。
質疑応答では、「マインドフルネス」が流行っていることについて主に揚平氏に質問が出された。氏は、「マインド」はノイズであり、「マインド」を無くすべきであり、本来は「マインドレスネス」ではないか、また、「自己を減じて全体とつながって個に還ってくる」という考え方をすべきではないかということであった。次に留学生から、「私の周りでは仕事が楽しいと言っている人がいないが、『楽しんで仕事をする』ということはどういうことか。」という質問があった。これに対して周氏は、平成時代にリソースのある大企業がベンチャー企業であるGAFAやYahooに負けてしまった最大の原因は、「モチベーション」がなかったことである。つまり、日本企業では「好きなことは仕事にできない」「上司から言われたからやっている」という社会人が多く、それではある程度のところまでは到達できても、これからも「モチベーション」のあるメンバーで構成される会社に勝てるはずはない。だから30代あるいは早ければ20代から「好きなことを仕事にする」、モチベーションを持って仕事ができることを意識したほうが良いということであった。質疑応答では、「マインドフルネス」が流行っていることについて主に揚平氏に質問が出された。氏は、「マインド」はノイズであり、「マインド」を無くすべきであり、本来は「マインドレスネス」ではないか、また、「自己を減じて全体とつながって個に還ってくる」という考え方をすべきではないかということであった。次に留学生から、「私の周りでは仕事が楽しいと言っている人がいないが、『楽しんで仕事をする』ということはどういうことか。」という質問があった。これに対して周氏は、平成時代にリソースのある大企業がベンチャー企業であるGAFAやYahooに負けてしまった最大の原因は、「モチベーション」がなかったことである。つまり、日本企業では「好きなことは仕事にできない」「上司から言われたからやっている」という社会人が多く、それではある程度のところまでは到達できても、これからも「モチベーション」のあるメンバーで構成される会社に勝てるはずはない。だから30代あるいは早ければ20代から「好きなことを仕事にする」、モチベーションを持って仕事ができることを意識したほうが良いということであった。
最後に、お二人からメッセージをいただいた。周氏からは「世間は自分の信じる社会からはみでる人を恐れるから、皆さんをだまそうとするが、社会に騙されないために教養(知的なタフネス)を身に付けてほしい」ということ、揚平氏からは「アップデートしかしない会社はもう続かない。次元が変わった令和時代では、平成時代のトラックはもう終わっている。新しいトラックに乗りなさい。そして、日本人の得意な部分を活かすとすれば、今後はロボティックスが有望であろう。」とのことであった。公開講演会には予想以上に多くの方にご出席いただき、お二人には感謝申し上げるとともに、お話しいただいた内容が少しでも多くの方に届き、新しい時代を生きるための糧となれば主催者としては望外の喜びであります。
なお、当日の様子はYouTubeにてご覧いただけます。(2019年7月23日現在)
文責:小澤康裕
(左)T.A.M.M.デマル氏の報告(右)A.V.M.イアール氏の報告
於:池袋キャンパス11号館A301教室
今回の国際シンポジウムでは、ヨーロッパから5人の専門家を招聘し、「18世紀フランス経済学とその後の経済学に与えた影響」について、講演してもらい、各報告について活発な議論が交わされた。
まず、18世紀フランスの重農主義経済学が19世紀初期のスコットランド政治経済学に与えた影響について、Demals氏とHyard女史が報告。18世紀末には、重農主義経済学はほとんどその使命を終えた、とされるが、その教義は、実際、スコットランドの大学、とりわけ、デュガルド・ステュアートがいたエジンバラ大学では、彼によって教えられていた。また、ローダデール卿や、ブルーガム、ジェームズ・ミルによっても論じられた。コメンテーターは東京大学の野原慎司氏にお願いした。
今回の国際シンポジウムでは、ヨーロッパから5人の専門家を招聘し、「18世紀フランス経済学とその後の経済学に与えた影響」について、講演してもらい、各報告について活発な議論が交わされた。
まず、18世紀フランスの重農主義経済学が19世紀初期のスコットランド政治経済学に与えた影響について、Demals氏とHyard女史が報告。18世紀末には、重農主義経済学はほとんどその使命を終えた、とされるが、その教義は、実際、スコットランドの大学、とりわけ、デュガルド・ステュアートがいたエジンバラ大学では、彼によって教えられていた。また、ローダデール卿や、ブルーガム、ジェームズ・ミルによっても論じられた。コメンテーターは東京大学の野原慎司氏にお願いした。
G.ファッカレロ氏の報告
続いて、古典派経済学とフランス感覚派政治経済学の遺産、と題して、Faccarello氏が講演、チュルゴとコンドルセを、18世紀を代表するフランスの経済学者として取り上げ、イギリス古典派に先駆けた彼らの理論的貢献を列挙した。すなわち、資本主義的競争の原理とそのもたらすもの、均衡条件としての利潤率の均等化、財の均衡相対価格の決定、貨幣の理論、自由な競争市場と国家との関係、などである。コメンテーターは、大東文化大学の竹永進氏が担当した。
C.ゲルケ氏の報告
3番目に、重農主義のイギリス古典派経済学への影響について、Gehrke氏が報告。主要なイギリスの経済学者たちの経済理論への、重農学派の影響を論じた。初めに、スミスによる批判と受容、そしてトレンズとジェームズ・ミルによる批判を検討。また、リカードウやマルサスがどのように重農主義に向き合ったかを見、そして最後に、マルクスの単純再生産、拡大再生産のアイデアや、循環的な生産関係の条件、一般的利潤率の成立と生産価格の形成について、重農主義から受けたであろう影響を解説した。本学の黒木龍三氏がコメントした。
P.シュタイナー氏の報告
最後が、Steiner氏で、道徳科学と政治学、と題して、重農主義とセイを中心とするフランス古典派経済学との関係についての報告であった。セイ以降のフランスの経済学者たちは、イギリスのスミスやリカードウの影響が強く、結局は、18世紀のフランス経済学、とりわけ経済の基本構造を初めて科学的に明らかにした重農主義の貢献をいったんは否定しにかかるが、最終的には、重農学派が主張した経済哲学のアプローチを受け入れることで、その後の中央集権の下での経済技術者(economic engineer)を育てることにもなった。シュタイナー氏へのコメントは、本学の安藤裕介氏が担当した。
全体の様子
今回のシンポジウムは、本学名誉教授の黒木龍三氏の発案の下、ファッカレロ教授の全面的な支援によって実現した。18世紀フランスで登場した重農主義の貢献とその影響に改めて光を当てるとともに、その後の古典派を中心とした経済学がどのようにその成果を吸収、継承していったのか、あるいは等閑視したのかについて、18世紀フランスの政治経済学の先進性や歴史的役割を浮き彫りにするとともに明らかにし、哲学的・社会学的な分野などからの多面的な考察も加えられた。九州など、遠方からのシンポジウムへの参加者も大勢あり(約30名)、フロアからの活発な質疑応答も含め、大いに成果があった。
日時:2019年12月11日(水)18:00~20:00
会場:池袋キャンパス 12号館4階第2・3共同研究室
報告:東風谷 太一氏(東京外国語大学)「醸造所は誰のもの?—近代南ドイツ都市・営業体制におけるビール醸造業の位置づけ」
会場:池袋キャンパス 12号館4階第2・3共同研究室
報告:東風谷 太一氏(東京外国語大学)「醸造所は誰のもの?—近代南ドイツ都市・営業体制におけるビール醸造業の位置づけ」
日時 2019年12月14日(土)9:30~18:30
会場 池袋キャンパス 15号館M302教室
報告
1.洪 紹洋氏(陽明大学)
「輸入代替と企業行動:台湾における自動車産業の発展史(1953-1985)」
2.呂 寅満氏(江陵原州大学)
「韓国における自動車産業の発展と産業政策 」詳細
3.林 采成(立教大学)
「忠肥・総合化学と韓国石油産業」
4.呉 聡敏氏(国立台湾大学)
「台湾電子産業の発展:比較優位とFDI」
5.朴 基火主氏(誠信女子大学)
「韓国電子産業のキャッチアップ」
6.Jitendra Uttam (Jawaharlal Nehru University)
「Industrial policy comparison between East Asia and India:Focusing on the electronic industry 」
7.朱 益鍾氏(落星台経済研究所)
「韓国総合製鉄所の初期技術学習」
8.蔡 龍保氏(国立台北大学)
「高度成長初期台湾におけるインフラの構築と運営:鉄道を中心として」
9.韓 載香氏(北海道大学)
「韓国経済発展と直接投資の再考」
共催 科研費基盤研究(B)17H02554(研究代表者:林采成)
会場 池袋キャンパス 15号館M302教室
報告
1.洪 紹洋氏(陽明大学)
「輸入代替と企業行動:台湾における自動車産業の発展史(1953-1985)」
2.呂 寅満氏(江陵原州大学)
「韓国における自動車産業の発展と産業政策 」詳細
3.林 采成(立教大学)
「忠肥・総合化学と韓国石油産業」
4.呉 聡敏氏(国立台湾大学)
「台湾電子産業の発展:比較優位とFDI」
5.朴 基火主氏(誠信女子大学)
「韓国電子産業のキャッチアップ」
6.Jitendra Uttam (Jawaharlal Nehru University)
「Industrial policy comparison between East Asia and India:Focusing on the electronic industry 」
7.朱 益鍾氏(落星台経済研究所)
「韓国総合製鉄所の初期技術学習」
8.蔡 龍保氏(国立台北大学)
「高度成長初期台湾におけるインフラの構築と運営:鉄道を中心として」
9.韓 載香氏(北海道大学)
「韓国経済発展と直接投資の再考」
共催 科研費基盤研究(B)17H02554(研究代表者:林采成)
2018年度 講演会等のお知らせ及び開催報告
2018年4月25日(水)に11号館A203教室において、公開講演会「公認会計士への道」が例年通り開催された。昨年実施された講演会に比べて参加者は増加し42名が講演者の話に聞き入った。また、講演会後には多くの個別質問が寄せられた。
司会及び経済研究所長のあいさつの後、日本公認会計士協会が作成したビデオ「コウニンカイケイシってナンダ!?」の上映が行われた。公認会計士の業務について、監査、コンサルティング、組織内会計士という3つに分けて説明をするものであった。内容は大変わかりやすく簡潔にまとまっており、初めて「公認会計士」について知る参加者にも良く伝わったのではないだろうか。
その後、本学文学部フランス文学科を卒業された羽山友紀子氏(公認会計士・日本公認会計士協会東京会 広報委員会委員)より、公認会計士協会が作成したパンフレットに沿って公認会計士制度についての解説があった。また、ご自身の経験を踏まえ、公認会計士という職業の魅力についても穏やかに語っていただいた。
次に、昨年、本学経済学部4年在学中に公認会計士試験に合格し、現在、PwCあらた有限責任監査法人に勤務されている近藤はるか氏(本学経済学部2018年卒・2017年合格)から、小学生の時に公認会計士を目指すことを決め、大学1年の後半から公認会計士試験に挑戦し始めたこと、1日10時間ほど勉強し、試験に合格したというお話をいただいた。また、最後に、参加者に対して、公認会計士試験に挑戦して欲しいという激励があった。
また、山田浩一氏(公認会計士・立教公認会計士会会長)からは、本学OB・OGの公認会計士の方々のご活躍の様子等についてもお話しいただいた。さらに、公認会計士という資格を活かして、どのようなキャリアパスがあるのかを丁寧にご説明いただき、公認会計士試験へのチャレンジの推奨がなされた。
大変短い時間の講演会ではあったが、講演者のご尽力により内容は充実し、個別の質疑応答も行列になるほど活発に行われ、勉強方法を中心に参加者へ多くのアドバイスもいただいた。
監査業務の繁忙期にもかかわらず、後輩のためにご協力いただいた講師の先生方には、篤くお礼申し上げたい。
司会及び経済研究所長のあいさつの後、日本公認会計士協会が作成したビデオ「コウニンカイケイシってナンダ!?」の上映が行われた。公認会計士の業務について、監査、コンサルティング、組織内会計士という3つに分けて説明をするものであった。内容は大変わかりやすく簡潔にまとまっており、初めて「公認会計士」について知る参加者にも良く伝わったのではないだろうか。
その後、本学文学部フランス文学科を卒業された羽山友紀子氏(公認会計士・日本公認会計士協会東京会 広報委員会委員)より、公認会計士協会が作成したパンフレットに沿って公認会計士制度についての解説があった。また、ご自身の経験を踏まえ、公認会計士という職業の魅力についても穏やかに語っていただいた。
次に、昨年、本学経済学部4年在学中に公認会計士試験に合格し、現在、PwCあらた有限責任監査法人に勤務されている近藤はるか氏(本学経済学部2018年卒・2017年合格)から、小学生の時に公認会計士を目指すことを決め、大学1年の後半から公認会計士試験に挑戦し始めたこと、1日10時間ほど勉強し、試験に合格したというお話をいただいた。また、最後に、参加者に対して、公認会計士試験に挑戦して欲しいという激励があった。
また、山田浩一氏(公認会計士・立教公認会計士会会長)からは、本学OB・OGの公認会計士の方々のご活躍の様子等についてもお話しいただいた。さらに、公認会計士という資格を活かして、どのようなキャリアパスがあるのかを丁寧にご説明いただき、公認会計士試験へのチャレンジの推奨がなされた。
大変短い時間の講演会ではあったが、講演者のご尽力により内容は充実し、個別の質疑応答も行列になるほど活発に行われ、勉強方法を中心に参加者へ多くのアドバイスもいただいた。
監査業務の繁忙期にもかかわらず、後輩のためにご協力いただいた講師の先生方には、篤くお礼申し上げたい。
このイベントの開催報告はありません。
2018年10月4日(木)に池袋キャンパス7号館7101教室において、国際シンポジウム「農業の持続可能性評価の試みと有機農業」を開催しました。
経済研究所長のあいさつの後、イントロダクションとして大山利男准教授(本学経済学部)より本シンポジウムの趣旨が説明されました。有機農業は、もっとも持続可能な食料農業システムの一つと見なされてきましたが、ここ数年あらためて真に持続可能なシステムであるのかを再点検する国際的な動きがあること、その背景には持続可能な開発目標(SDGs)が国際的課題とされる中、食料農業分野においても持続可能な食料農業システムのあり方が問われていること、国連食糧農業機関(FAO)は「食料農業システムの持続可能性評価(SAFA)ガイドライン」を策定し、環境、経済、社会、ガバナンス等の多次元的な観点による持続可能性評価手法の開発を促していること、などの動向を紹介しました。
第1部の基調講演では、はじめにマティアス・シュトルツェ氏(FiBL:スイス有機農業研究所理事・社会経済研究部長)により、ヨーロッパにおける有機農業・市場の展開状況と農政改革の新しい潮流についてご講演をいただきました。世界的にもっとも有機農業が普及しており、有機食品市場も成長をつづけている地域ですが、その鍵となってきたのは政府の直接支払制度でした。しかし近年、持続可能性評価に基づいた新しい支払制度の提案がなされており、そこでは持続可能性の評価手法の開発に注目が集まっているという状況も紹介されました。つづいてクリスチャン・シャダー氏(同研究所 研究開発グループリーダー)より、食料農業システムの持続可能性評価手法について、実際に開発に携わる立場からご講演をいただきました。FAOのSAFAガイドラインにおける評価指標は、4局面、21項目、58小項目ですが、シャダー氏らが中心となって開発している評価手法SMARTでは、327指標を組み込み、世界各地の有機農場データを収集し、評価手法の改良をすすめているということでした。つぎに大山利男准教授より、日本の有機農業データに関する収集状況について報告がありました。日本国内の状況を把握できる客観的な統計データはきわめて限られていますが、その限られたデータの中から、日本の有機農業のポイント(土地利用型の耕種部門、畜産部門で弱いことなど)について指摘がありました。また谷口葉子氏(宮城大学講師)からは、有機市場データの収集システムについてご報告がありました。統計データがもっとも整備されているヨーロッパ諸国における有機農業データの収集方法、有機市場の調査手法などについて説明されました。
第2部のパネル・ディスカッションでは、より具体的な評価手法の実際について、またこのような評価手法を採用して実際に評価を試みている国にはどういった国があるのか、といった数々の質問・疑問への回答や、これからの日本の有機農業・食品産業部門への適用可能性と課題について意見交換がなされました。
シンポジウムには、平日午後に時間にもかかわらず約70名の参加がありました。大学・研究機関等の研究者や学生のほか、行政・議会関係者、有機農業関係者、流通事業者など多方面からご参加をいただきました。ここに厚くお礼を申し上げます。
経済研究所長のあいさつの後、イントロダクションとして大山利男准教授(本学経済学部)より本シンポジウムの趣旨が説明されました。有機農業は、もっとも持続可能な食料農業システムの一つと見なされてきましたが、ここ数年あらためて真に持続可能なシステムであるのかを再点検する国際的な動きがあること、その背景には持続可能な開発目標(SDGs)が国際的課題とされる中、食料農業分野においても持続可能な食料農業システムのあり方が問われていること、国連食糧農業機関(FAO)は「食料農業システムの持続可能性評価(SAFA)ガイドライン」を策定し、環境、経済、社会、ガバナンス等の多次元的な観点による持続可能性評価手法の開発を促していること、などの動向を紹介しました。
第1部の基調講演では、はじめにマティアス・シュトルツェ氏(FiBL:スイス有機農業研究所理事・社会経済研究部長)により、ヨーロッパにおける有機農業・市場の展開状況と農政改革の新しい潮流についてご講演をいただきました。世界的にもっとも有機農業が普及しており、有機食品市場も成長をつづけている地域ですが、その鍵となってきたのは政府の直接支払制度でした。しかし近年、持続可能性評価に基づいた新しい支払制度の提案がなされており、そこでは持続可能性の評価手法の開発に注目が集まっているという状況も紹介されました。つづいてクリスチャン・シャダー氏(同研究所 研究開発グループリーダー)より、食料農業システムの持続可能性評価手法について、実際に開発に携わる立場からご講演をいただきました。FAOのSAFAガイドラインにおける評価指標は、4局面、21項目、58小項目ですが、シャダー氏らが中心となって開発している評価手法SMARTでは、327指標を組み込み、世界各地の有機農場データを収集し、評価手法の改良をすすめているということでした。つぎに大山利男准教授より、日本の有機農業データに関する収集状況について報告がありました。日本国内の状況を把握できる客観的な統計データはきわめて限られていますが、その限られたデータの中から、日本の有機農業のポイント(土地利用型の耕種部門、畜産部門で弱いことなど)について指摘がありました。また谷口葉子氏(宮城大学講師)からは、有機市場データの収集システムについてご報告がありました。統計データがもっとも整備されているヨーロッパ諸国における有機農業データの収集方法、有機市場の調査手法などについて説明されました。
第2部のパネル・ディスカッションでは、より具体的な評価手法の実際について、またこのような評価手法を採用して実際に評価を試みている国にはどういった国があるのか、といった数々の質問・疑問への回答や、これからの日本の有機農業・食品産業部門への適用可能性と課題について意見交換がなされました。
シンポジウムには、平日午後に時間にもかかわらず約70名の参加がありました。大学・研究機関等の研究者や学生のほか、行政・議会関係者、有機農業関係者、流通事業者など多方面からご参加をいただきました。ここに厚くお礼を申し上げます。
このイベントの開催報告はありません。
このイベントの開催報告はありません。
立教大学経済研究所主催の第6回学術研究大会「トランプ政権とアメリカ経済」が、2018年3月9日(土)に立教大学池袋キャンパスの8号館8201教室において開催された。
この度6回目を迎える本大会は、本学経済学部にゆかりのある研究者(卒業生、名誉教授、助手・助教経験者など)による年に一度の研究会であり、研究上の交流を通じて懇親を深め、経済学部および経済学研究科の研究・教育の向上を図ることを目的にした公開講演会である。
研究大会では、まず大友敏明(本学経済研究所長)による開会挨拶において、保護主義を志向するトランプ政権下のアメリカ経済を考察することの意義について説明がなされた。その後、本学名誉教授2名、本学経済学部教授1名、計3名の研究者による研究報告と全体討論が行われた。当日は、本学経済学部の教員および退職者、本学経済学研究科の修了生、一般参加者など105名が参加した。
第一報告の小西一雄氏(本学名誉教授)「分裂するアメリカ資本主義—トランプ現象の経済的背景を考える—」では、まずリーマンショック以降も経済成長を持続し得たアメリカ経済の背景として、大量の移民流入と家計債務の増大による内需拡大のほか、情報通信産業の勃興や金融のグローバル化があったことが強調された。しかし、増大する移民労働者はラストベルト(さびついた工業地帯)から吐き出された白人労働者と低賃金労働力市場で競合し、金融のグローバル化は資産格差の拡大をもたらし、トランプ政権登場の背景となったことが指摘された。
第二報告の山縣宏之氏(本学経済学部教授)「トランプ現象の経済的背景—ラストベルトの産業構造高度化と製造業労働者—」では、まず2010年以降のアメリカにおける製造業の雇用回復傾向のなか、当該地域は平均よりも下位にあったことが確認された。次に、伝統的な民主党支持州でありながらもトランプ候補を選んだウィスコンシン・ミシガン・ペンシルベニア3州のデータでは、製造業雇用者が相対的に多いことが指摘された。その背景として、州政府による労働組合弱体化をともなう製造拠点誘致策があり、トランプ現象の一因となったことが報告された。
第三報告の北原徹氏(本学名誉教授)「中間層の没落とトランプ政権下のアメリカ経済」では、まず資産格差の拡大による所得格差の拡大や、中間層の所得低迷などのグラフが示された。続いて、家計資産増大の多くはキャピタルゲインによるものであり、2010年以降は株式保有比率の高い富裕層の保有資産が増大した一方で、中間層の家計債務が拡大したことが指摘された。家計債務の増大による支出拡大と資産価格上昇による資産効果は限界にたっしつつあり、所得格差の拡大による消費低迷が顕在化するリスクに警鐘が鳴らされた。
最後の全体討論ではフロアから多岐にわたって質問が出た。資本市場および金融政策に関するアメリカと日本との比較、アメリカ中間層に位置する白人労働者に対する移民労働者が与える影響、自動運転にみられるような従来型産業(自動車産業)と新興産業(IT産業)との融合、州によって異なる税制が個人消費に与える影響、個人所得の収入源の内訳、金利低下と景気循環との関係についてなど、報告者との間で活発な質疑応答が行われた。
最後に、菅沼隆(本学経済学部教授)による閉会挨拶において簡単な総括がなされた後、今年度で定年を迎える大友敏明(本学経済研究所長)への慰労の言葉で締めくくられ、満場拍手で閉会となった。
この度6回目を迎える本大会は、本学経済学部にゆかりのある研究者(卒業生、名誉教授、助手・助教経験者など)による年に一度の研究会であり、研究上の交流を通じて懇親を深め、経済学部および経済学研究科の研究・教育の向上を図ることを目的にした公開講演会である。
研究大会では、まず大友敏明(本学経済研究所長)による開会挨拶において、保護主義を志向するトランプ政権下のアメリカ経済を考察することの意義について説明がなされた。その後、本学名誉教授2名、本学経済学部教授1名、計3名の研究者による研究報告と全体討論が行われた。当日は、本学経済学部の教員および退職者、本学経済学研究科の修了生、一般参加者など105名が参加した。
第一報告の小西一雄氏(本学名誉教授)「分裂するアメリカ資本主義—トランプ現象の経済的背景を考える—」では、まずリーマンショック以降も経済成長を持続し得たアメリカ経済の背景として、大量の移民流入と家計債務の増大による内需拡大のほか、情報通信産業の勃興や金融のグローバル化があったことが強調された。しかし、増大する移民労働者はラストベルト(さびついた工業地帯)から吐き出された白人労働者と低賃金労働力市場で競合し、金融のグローバル化は資産格差の拡大をもたらし、トランプ政権登場の背景となったことが指摘された。
第二報告の山縣宏之氏(本学経済学部教授)「トランプ現象の経済的背景—ラストベルトの産業構造高度化と製造業労働者—」では、まず2010年以降のアメリカにおける製造業の雇用回復傾向のなか、当該地域は平均よりも下位にあったことが確認された。次に、伝統的な民主党支持州でありながらもトランプ候補を選んだウィスコンシン・ミシガン・ペンシルベニア3州のデータでは、製造業雇用者が相対的に多いことが指摘された。その背景として、州政府による労働組合弱体化をともなう製造拠点誘致策があり、トランプ現象の一因となったことが報告された。
第三報告の北原徹氏(本学名誉教授)「中間層の没落とトランプ政権下のアメリカ経済」では、まず資産格差の拡大による所得格差の拡大や、中間層の所得低迷などのグラフが示された。続いて、家計資産増大の多くはキャピタルゲインによるものであり、2010年以降は株式保有比率の高い富裕層の保有資産が増大した一方で、中間層の家計債務が拡大したことが指摘された。家計債務の増大による支出拡大と資産価格上昇による資産効果は限界にたっしつつあり、所得格差の拡大による消費低迷が顕在化するリスクに警鐘が鳴らされた。
最後の全体討論ではフロアから多岐にわたって質問が出た。資本市場および金融政策に関するアメリカと日本との比較、アメリカ中間層に位置する白人労働者に対する移民労働者が与える影響、自動運転にみられるような従来型産業(自動車産業)と新興産業(IT産業)との融合、州によって異なる税制が個人消費に与える影響、個人所得の収入源の内訳、金利低下と景気循環との関係についてなど、報告者との間で活発な質疑応答が行われた。
最後に、菅沼隆(本学経済学部教授)による閉会挨拶において簡単な総括がなされた後、今年度で定年を迎える大友敏明(本学経済研究所長)への慰労の言葉で締めくくられ、満場拍手で閉会となった。
2017年度 講演会等のお知らせ及び開催報告
2017年5月10日(水)に14号館D401教室において、公開講演会「公認会計士への道」が開催された。昨年実施された同様の講演会に比べて参加者は若干減少し30名程度であったが、例年に比べて、講演会後の個別質問が多く、参加者の関心の高さが際立った。
はじめに、日本公認会計士協会による「CPA document」というビデオ上映が行われた。公認会計士という職業について、また、監査という業務について、わかりやすく簡潔にまとまっていて、大変理解しやすい内容であった。
その後、小林尚明氏(公認会計士・日本公認会計士協会)より、公認会計士制度についての解説があり、また、ご自身の長年の経験を踏まえ、公認会計士という職業の魅力、素晴らしさ、そして誇りについて熱く語っていただいた。
次に、昨年、公認会計士試験に合格し、有限責任監査法人トーマツに勤務されている大川 央倫氏(本学経済学部卒・2016年合格)から、大学時代に公認会計士試験に挑戦し始めたことや、その後、一時期、試験勉強を中断し、海外留学を経験したり、一般企業への就職活動を目指したりと、紆余曲折を経て試験に合格したというお話をいただいた。また、入職後に感じたこととして、女性が働きやすい職場だということや、上場企業の経営者と話をする機会があることのすばらしさ等を述べられ、最後に、参加者の皆さんに対して、ぜひ立教卒の会計士を増やしていきたいというエールが送られた。
また、山田浩一氏(公認会計士・立教公認会計士会会長)からは、まず、立教公認会計士会の紹介があった。現在、立教公認会計士会の会員は、把握されているだけで600名程度いるというお話であった。また、本学OB・OGの公認会計士の方々のご活躍の様子等についてもお話しいただいた。さらに、公認会計士という資格を活かして、どのようなキャリアパスがあるのかを丁寧にご説明いただき、公認会計士試験へのチャレンジの勧めで締めくくられた。
時間が限られた中ではあったが、質疑応答も活発に行われ、参加者への多くのアドバイスもいただいた。前述した通り、講演会の終了後には、個別質問に長い行列ができ、講師の先生方には長時間にわたって丁寧にお答えいただいた。
監査業務の繁忙期にもかかわらず、後輩のためにご協力いただいた講師の先生方には、篤くお礼申し上げたい。
はじめに、日本公認会計士協会による「CPA document」というビデオ上映が行われた。公認会計士という職業について、また、監査という業務について、わかりやすく簡潔にまとまっていて、大変理解しやすい内容であった。
その後、小林尚明氏(公認会計士・日本公認会計士協会)より、公認会計士制度についての解説があり、また、ご自身の長年の経験を踏まえ、公認会計士という職業の魅力、素晴らしさ、そして誇りについて熱く語っていただいた。
次に、昨年、公認会計士試験に合格し、有限責任監査法人トーマツに勤務されている大川 央倫氏(本学経済学部卒・2016年合格)から、大学時代に公認会計士試験に挑戦し始めたことや、その後、一時期、試験勉強を中断し、海外留学を経験したり、一般企業への就職活動を目指したりと、紆余曲折を経て試験に合格したというお話をいただいた。また、入職後に感じたこととして、女性が働きやすい職場だということや、上場企業の経営者と話をする機会があることのすばらしさ等を述べられ、最後に、参加者の皆さんに対して、ぜひ立教卒の会計士を増やしていきたいというエールが送られた。
また、山田浩一氏(公認会計士・立教公認会計士会会長)からは、まず、立教公認会計士会の紹介があった。現在、立教公認会計士会の会員は、把握されているだけで600名程度いるというお話であった。また、本学OB・OGの公認会計士の方々のご活躍の様子等についてもお話しいただいた。さらに、公認会計士という資格を活かして、どのようなキャリアパスがあるのかを丁寧にご説明いただき、公認会計士試験へのチャレンジの勧めで締めくくられた。
時間が限られた中ではあったが、質疑応答も活発に行われ、参加者への多くのアドバイスもいただいた。前述した通り、講演会の終了後には、個別質問に長い行列ができ、講師の先生方には長時間にわたって丁寧にお答えいただいた。
監査業務の繁忙期にもかかわらず、後輩のためにご協力いただいた講師の先生方には、篤くお礼申し上げたい。
立教大学経済研究所主催の国際シンポジウム「災害復興政策と都市・地域のレジリエンス」が、2017年11月4日(土)に立教大学池袋キャンパスの太刀川記念館第1・2会議室において開催された。
今回の国際シンポジウムでは、世界各国の自然災害からの復興に焦点を当て、災害によって破壊された人々の生業と地域経済の復興に資する災害復興政策とは如何なるものかを問うた。特に、自然災害が有する歴史性や地域性の背景となる被災地域固有の社会経済システムのレジリエンス状態に関して、国際比較視点からのアプローチを試みた。そのために、日本、中国、アメリカの研究機関において災害復興と地域発展に関する研究を行っている研究者らが集い、世界各国の災害復興政策に関する最新の研究成果を発表し、災害に強い強靭な都市・地域の構築可能性について議論した。
当日の国際シンポジウムでは、大友敏明(立教大学経済研究所長)による開催趣旨の説明がなされた後に、国内外の計6名の研究者による研究報告と全体討論が行われ、最後に櫻井公人(立教大学経済学部教授)の総括と講評によって締めくくられた。
第1報告「レジリエンス政策にだまされない地域(山本大策氏、米国・コルゲート大学准教授)」では、レジリエンス政策について報告が行われた。「レジリエンス」という言葉を生態的観点から確認し、「結果としてのレジリエンス」と「潜在的レジリエンス」の研究について検討した。レジリエンスが高いことは必ずしも良いこととは限らず、レジリエンスという大義名分のもとで従来型の開発が進められている。そのような「悪い」政策から地域を守るため、また本当の意味で地域のレジリエンスを高めるには、地域レベルで公論形成が求められ、「誰のためのレジリエンスか」という視点が重要になると指摘された。
第2報告「災害復興における物流とマテリアルハンドリングの役割(王群智氏、中国西南交通大学准教授)」では中国における災害復興時の物流とマテリアルハンドリングについて報告が行われた。四川省で近年発生した汶川地震、雅安地震、九寨溝地震の復興における物流とマテリアルハンドリングについて紹介され、それらの課題や成功に言及された。需要のすばやい把握のほか、物資だけでなくマテリアルハンドリングサービスの供給も重要であることが指摘された。
第3報告「タイ大洪水からのレジリエントな復興政策(佐野孝治氏、日本福島大学教授)」ではタイ大洪水の復興がレジリエントな復興政策であるかという検討が行われた。人的被害に加え、グローバルサプライチェーンの寸断も発生した大洪水は政治対立といった政府の不備・地域対立・リスク認識の甘さが原因の一部として挙げられる。企業主導の急速な復旧の一方、国家レベルでの復旧は進んでおらず、下流のバンコク首都圏と上流の農村部のレジリエンスには格差がある。このことを踏まえるなら、これがより良い復興だったとは言い難いという見解が示された。
第4報告「中国における環境保護政策が都市発展に及ぼす影響(朱哲氏、中国広東石油化工学院講師)」では中国政府における環境保護政策について報告が行われた。はじめに中国の環境政策の実態について紹介が行われ、時間の経過とともに変化しつつあるも依然として政府主導の色が強いことが確認された。そのうえで実際に行われている環境政策の事例とその影響について言及され、政府主導の政策が悪影響を与えている可能性があることが指摘された。
第5報告「被災地の音楽文化遺産の保護と伝承—大学音楽教育の実践(楊禾氏、中国四川大学講師)」では被災地の音楽文化遺産の復興政策と大学での音楽教育について報告が行われた。被災地では少数民族への被害も集中していた。自然災害後の復興政策では、文化領域があまり重要視されていない現状が指摘された。大学の一般教養としての音楽教育で音楽文化遺産を取り扱い、その保護と伝承を図るべきではないかと提案され、その手法や効果についても紹介された。
第6報告「避難区域を縮小させる日本の原子力復興政策(藤本典嗣氏、日本東洋大学教授)」では日本の原子力復興政策における問題点について報告が行われた。現在政府が行う政策は除染を前提として帰還を促す「除染集約型復興政策」であり、これらはエビデンスに基づいた政策ではない。除染の理由を政治的力学ではなく予算制約から考え直すべきであると指摘され、そのモデルが紹介された。帰還ではなく移住が選好される可能性にも言及された。
最後の全体討論では、レジリエンス政策、レジリエントな地域づくりなどの最近普及しつつある概念の両義性(肯定的、否定的)という理論的な問題から、現在の多くの国における災害復興策が抱えている実際問題などについて活発な議論と意見交換が行われ、災害復興政策を通じて如何に被災地の社会経済発展と住民の生活質の向上を図るべきか、について認識を深めることができた。
今回の国際シンポジウムでは、世界各国の自然災害からの復興に焦点を当て、災害によって破壊された人々の生業と地域経済の復興に資する災害復興政策とは如何なるものかを問うた。特に、自然災害が有する歴史性や地域性の背景となる被災地域固有の社会経済システムのレジリエンス状態に関して、国際比較視点からのアプローチを試みた。そのために、日本、中国、アメリカの研究機関において災害復興と地域発展に関する研究を行っている研究者らが集い、世界各国の災害復興政策に関する最新の研究成果を発表し、災害に強い強靭な都市・地域の構築可能性について議論した。
当日の国際シンポジウムでは、大友敏明(立教大学経済研究所長)による開催趣旨の説明がなされた後に、国内外の計6名の研究者による研究報告と全体討論が行われ、最後に櫻井公人(立教大学経済学部教授)の総括と講評によって締めくくられた。
第1報告「レジリエンス政策にだまされない地域(山本大策氏、米国・コルゲート大学准教授)」では、レジリエンス政策について報告が行われた。「レジリエンス」という言葉を生態的観点から確認し、「結果としてのレジリエンス」と「潜在的レジリエンス」の研究について検討した。レジリエンスが高いことは必ずしも良いこととは限らず、レジリエンスという大義名分のもとで従来型の開発が進められている。そのような「悪い」政策から地域を守るため、また本当の意味で地域のレジリエンスを高めるには、地域レベルで公論形成が求められ、「誰のためのレジリエンスか」という視点が重要になると指摘された。
第2報告「災害復興における物流とマテリアルハンドリングの役割(王群智氏、中国西南交通大学准教授)」では中国における災害復興時の物流とマテリアルハンドリングについて報告が行われた。四川省で近年発生した汶川地震、雅安地震、九寨溝地震の復興における物流とマテリアルハンドリングについて紹介され、それらの課題や成功に言及された。需要のすばやい把握のほか、物資だけでなくマテリアルハンドリングサービスの供給も重要であることが指摘された。
第3報告「タイ大洪水からのレジリエントな復興政策(佐野孝治氏、日本福島大学教授)」ではタイ大洪水の復興がレジリエントな復興政策であるかという検討が行われた。人的被害に加え、グローバルサプライチェーンの寸断も発生した大洪水は政治対立といった政府の不備・地域対立・リスク認識の甘さが原因の一部として挙げられる。企業主導の急速な復旧の一方、国家レベルでの復旧は進んでおらず、下流のバンコク首都圏と上流の農村部のレジリエンスには格差がある。このことを踏まえるなら、これがより良い復興だったとは言い難いという見解が示された。
第4報告「中国における環境保護政策が都市発展に及ぼす影響(朱哲氏、中国広東石油化工学院講師)」では中国政府における環境保護政策について報告が行われた。はじめに中国の環境政策の実態について紹介が行われ、時間の経過とともに変化しつつあるも依然として政府主導の色が強いことが確認された。そのうえで実際に行われている環境政策の事例とその影響について言及され、政府主導の政策が悪影響を与えている可能性があることが指摘された。
第5報告「被災地の音楽文化遺産の保護と伝承—大学音楽教育の実践(楊禾氏、中国四川大学講師)」では被災地の音楽文化遺産の復興政策と大学での音楽教育について報告が行われた。被災地では少数民族への被害も集中していた。自然災害後の復興政策では、文化領域があまり重要視されていない現状が指摘された。大学の一般教養としての音楽教育で音楽文化遺産を取り扱い、その保護と伝承を図るべきではないかと提案され、その手法や効果についても紹介された。
第6報告「避難区域を縮小させる日本の原子力復興政策(藤本典嗣氏、日本東洋大学教授)」では日本の原子力復興政策における問題点について報告が行われた。現在政府が行う政策は除染を前提として帰還を促す「除染集約型復興政策」であり、これらはエビデンスに基づいた政策ではない。除染の理由を政治的力学ではなく予算制約から考え直すべきであると指摘され、そのモデルが紹介された。帰還ではなく移住が選好される可能性にも言及された。
最後の全体討論では、レジリエンス政策、レジリエントな地域づくりなどの最近普及しつつある概念の両義性(肯定的、否定的)という理論的な問題から、現在の多くの国における災害復興策が抱えている実際問題などについて活発な議論と意見交換が行われ、災害復興政策を通じて如何に被災地の社会経済発展と住民の生活質の向上を図るべきか、について認識を深めることができた。
立教大学経済研究所主催の第5回学術研究大会「ヨーロッパの統合と分化—ドイツ・フランス・イギリス」が、2018年3月10日(土)に立教大学池袋キャンパスの11号館A203教室において開催された。
今回5回目を迎える本研究大会は、本学経済学部にゆかりのある研究者(卒業生、名誉教授、助手・助教経験者など)による年に一度の研究会であり、研究上の交流を通じて懇親を深め、経済学部および経済学研究科の研究・教育の向上を図ることを目的にした公開講演会である。今年の大会では、Brexitに伴うEU経済統合への衝撃や急増する移民への対応をめぐって噴出した各国の政治・社会的問題の本質を把握すべく、ヨーロッパ統合の歴史と現状を問うた。
研究大会では、大友敏明(立教大学経済研究所長)による開催趣旨の説明がなされた後に、学内外の計3名の研究者による研究報告と全体討論が行われた。当日は、本学名誉教授、本学経済学部の退職者、本学経済学研究科の修了生、一般参加者など約55名が参加した。
第一報告の菊池雄太氏(本学経済学部准教授)「ヨーロッパの中のドイツをめぐって—ドイツ経済史研究の一視座」では、統合・拡大を続けてきたヨーロッパの中におけるドイツの歴史的・経済史的立ち位置に関して、地域経済圏(ローカル経済圏と超域経済圏)の視点から考察された。とりわけ西方(大西洋経済)と東方(中東欧市場)の接合・融合の中心的な役割を果たしてきた歴史的経緯を辿りながら、ドイツ経済とヨーロッパ経済の不可分・不分離性、および連関性について議論された。
第二報告の中島俊克氏(本学経済学部教授)「ジャン・モネの生涯と欧州経済統合」では、ヨーロッパ統合の父の1人とも言われているフランスの実業家・政治家の生涯を詳しく考察することを通じて、ヨーロッパ経済のしくみの変容過程をナマで捉えようと試みたものであった。とりわけジャン・モネは、当初から確固たる統合構想をもってヨーロッパの統合にコミットしてきた政治家として評価するには疑問が多く、実務家としてアメリカとの豊富な人脈を活かしながら、フランスとヨーロッパ経済の発展へ寄与してきた側面において大いに評価できる、と指摘された。
第三報告の福島清彦氏(元本学経済学部教授)「転機を迎えた欧州統合と経済政策の展望」では、Brexit、移民増加、新独仏同盟、ロシアのEU解体戦略の強化などを転機に、EUの発展戦略が従来の安定志向から成長重視へと転換しつつあると力説された。とりわけ従来のエリート官僚・政治家中心に政治主導で進められた統合は限界に至り、今後はEU参加各国内での、国民全体によるEUの存在意義やその進路に関する広範な討議と共通認識の形成に基づく民主的な統合への道に進む必要があることが論じられた。
最後の全体討論では、大きな転機を迎えているヨーロッパ統合を分析・理解する際に、その歴史的な過程の把握と共に、それを単なる経済的な側面に関する議論に止まらず、政治的、社会的、さらには文化的な側面をも念頭に置きつつ、民主主義的な、包括的な統合に向かうのか、それとも自国民の利益のみを重視して、分化への道を辿っていくのか、などについて活発な議論が行われた。
今回5回目を迎える本研究大会は、本学経済学部にゆかりのある研究者(卒業生、名誉教授、助手・助教経験者など)による年に一度の研究会であり、研究上の交流を通じて懇親を深め、経済学部および経済学研究科の研究・教育の向上を図ることを目的にした公開講演会である。今年の大会では、Brexitに伴うEU経済統合への衝撃や急増する移民への対応をめぐって噴出した各国の政治・社会的問題の本質を把握すべく、ヨーロッパ統合の歴史と現状を問うた。
研究大会では、大友敏明(立教大学経済研究所長)による開催趣旨の説明がなされた後に、学内外の計3名の研究者による研究報告と全体討論が行われた。当日は、本学名誉教授、本学経済学部の退職者、本学経済学研究科の修了生、一般参加者など約55名が参加した。
第一報告の菊池雄太氏(本学経済学部准教授)「ヨーロッパの中のドイツをめぐって—ドイツ経済史研究の一視座」では、統合・拡大を続けてきたヨーロッパの中におけるドイツの歴史的・経済史的立ち位置に関して、地域経済圏(ローカル経済圏と超域経済圏)の視点から考察された。とりわけ西方(大西洋経済)と東方(中東欧市場)の接合・融合の中心的な役割を果たしてきた歴史的経緯を辿りながら、ドイツ経済とヨーロッパ経済の不可分・不分離性、および連関性について議論された。
第二報告の中島俊克氏(本学経済学部教授)「ジャン・モネの生涯と欧州経済統合」では、ヨーロッパ統合の父の1人とも言われているフランスの実業家・政治家の生涯を詳しく考察することを通じて、ヨーロッパ経済のしくみの変容過程をナマで捉えようと試みたものであった。とりわけジャン・モネは、当初から確固たる統合構想をもってヨーロッパの統合にコミットしてきた政治家として評価するには疑問が多く、実務家としてアメリカとの豊富な人脈を活かしながら、フランスとヨーロッパ経済の発展へ寄与してきた側面において大いに評価できる、と指摘された。
第三報告の福島清彦氏(元本学経済学部教授)「転機を迎えた欧州統合と経済政策の展望」では、Brexit、移民増加、新独仏同盟、ロシアのEU解体戦略の強化などを転機に、EUの発展戦略が従来の安定志向から成長重視へと転換しつつあると力説された。とりわけ従来のエリート官僚・政治家中心に政治主導で進められた統合は限界に至り、今後はEU参加各国内での、国民全体によるEUの存在意義やその進路に関する広範な討議と共通認識の形成に基づく民主的な統合への道に進む必要があることが論じられた。
最後の全体討論では、大きな転機を迎えているヨーロッパ統合を分析・理解する際に、その歴史的な過程の把握と共に、それを単なる経済的な側面に関する議論に止まらず、政治的、社会的、さらには文化的な側面をも念頭に置きつつ、民主主義的な、包括的な統合に向かうのか、それとも自国民の利益のみを重視して、分化への道を辿っていくのか、などについて活発な議論が行われた。
2016年度 講演会等のお知らせ及び開催報告
2016年4月20日(水)に14号館D401教室において、公開講演会「公認会計士への道」が開催された。今春入学したばかりの1年生を中心に参加者は50名を超え、大変な盛況だった。
はじめに、日本公認会計士協会の「CPA document」というビデオ上映の後、小林尚明氏(公認会計士・日本公認会計士協会)より、ご自身の経験を踏まえ、公認会計士の業務領域や監査業務の概要について、また、公認会計士という職業の素晴らしさと誇りについてお話しいただいた。
次に、昨年、公認会計士試験に合格し、PwCあらた監査法人に勤務されている横澤祐里氏(本学経営学部卒・2015年合格)から、公認会計士試験に挑戦し始めたころから試験勉強中の生活などについての具体的なお話をいただいた。同級生が順調に大手企業への就職を決めていく中、大学卒業後も試験勉強を続けることは大変なことだったが、長い人生を考えると、試験勉強に費やす数年は何も後れを取ることにならないというメッセージが印象的だった。
また、山田浩一氏(公認会計士・立教公認会計士会会長)からは、公認会計士として長年活躍してきたご経験、また、本学OBの公認会計士の方々がどのように活躍されているか等についてお話しいただいた。また、会員数を順調に増やしている立教公認会計士会についても簡単にご説明いただいた。
質疑応答も活発に行われ、公認会計士の年収や試験勉強についてのアドバイスなどについてさらにお話しいただいた。講演会の終了後も個別に長い行列ができるほど質問があり、講師の先生方には丁寧にお答えいただいた。
繁忙期にもかかわらず、後輩のために長時間にわたってご協力いただいた講師の先生方には、篤くお礼申し上げたい
はじめに、日本公認会計士協会の「CPA document」というビデオ上映の後、小林尚明氏(公認会計士・日本公認会計士協会)より、ご自身の経験を踏まえ、公認会計士の業務領域や監査業務の概要について、また、公認会計士という職業の素晴らしさと誇りについてお話しいただいた。
次に、昨年、公認会計士試験に合格し、PwCあらた監査法人に勤務されている横澤祐里氏(本学経営学部卒・2015年合格)から、公認会計士試験に挑戦し始めたころから試験勉強中の生活などについての具体的なお話をいただいた。同級生が順調に大手企業への就職を決めていく中、大学卒業後も試験勉強を続けることは大変なことだったが、長い人生を考えると、試験勉強に費やす数年は何も後れを取ることにならないというメッセージが印象的だった。
また、山田浩一氏(公認会計士・立教公認会計士会会長)からは、公認会計士として長年活躍してきたご経験、また、本学OBの公認会計士の方々がどのように活躍されているか等についてお話しいただいた。また、会員数を順調に増やしている立教公認会計士会についても簡単にご説明いただいた。
質疑応答も活発に行われ、公認会計士の年収や試験勉強についてのアドバイスなどについてさらにお話しいただいた。講演会の終了後も個別に長い行列ができるほど質問があり、講師の先生方には丁寧にお答えいただいた。
繁忙期にもかかわらず、後輩のために長時間にわたってご協力いただいた講師の先生方には、篤くお礼申し上げたい
立教大学経済研究所主催、ユーラシア研究所後援のシンポジウム「日露関係とエネルギー安全保障が、2017年1月14日(土)、立教大学池袋キャンパス11号館A203教室において開催された。
欧米からアジアへの中長期的なパワーシフトに対応してロシアの東方シフトが進む中、今日の日ロ協力が大きな課題として浮上している。この問題は単なる二国間の問題にとどまらず、東アジア経済、ひいては世界経済の構造変化にもつながるグローバル・イシューとなっている。本シンポジウムでは、この問題に詳しい研究者、実務家、ジャーナリストが集まり、グローバルの視点から日ロ経済協力とエネルギー安全保障の展望について議論した。
シンポジウムでは、櫻井公人・立教大学経済研究所長からの問題提起の後に、五つの報告と全体討論が行われた。
第一報告では、「欧ロ関係の変化とロシア東方シフトのゆくえ」というテーマの下で、蓮見雄氏(立正大学経済学部教授)よりロシアがアジアに向かわざるを得ない背景として欧ロ間の政治経済的変化が考察され、ロシアはヨーロッパの市場を確保しながらもアジア市場を開拓しなければならなくなったことが指摘された。
第二報告では、「ロシア・エネルギー戦略のキーポイント」のテーマの下で、 本村眞澄氏(JOGMEC主任研究員)より戦後ソ連体制から今日に至るまで原油・ガスをめぐるソ連・ロシア側のエネルギー販売政策についての検討が行われ、それが日本側にとって持つエネルギー安全保障としての重要性が考察された。
第三報告では、「ロシアの資源開発と日ロ経済協力」というテーマの下で、杉浦敏廣氏(環日本海経済研究所共同研究員)よりロシアの原油・ガス生産量および輸出価格への検討を踏まえてその推移がロシア経済に及ぼす影響や、その中で要請される日ロ経済協力の必要性に関する報告が行われた。
第四報告では、「プーチン戦略のねらいと日ロ関係」というテーマの下で、大野正美氏(朝日新聞記者)より中露善隣友好条約の締結を事例として日ロ両国が経済協力を通じて経済合理性を追及する中、そこに内在している領土問題の複雑性が国際政治的に検討され、その妥協可能性が論じられた。
第五報告では、「中ロ関係は蜜月・安定に向かうのか」というテーマの下で、酒井明司氏(三菱商事シニアアドバイザー)より「中国の内政と経済」、「米ロ関係、米中関係」という二つの要素から中ロ関係の歴史的展開と現在状態が考察され、アメリカとの対立、反イスラム・反テロ、両国間の経済関係などが中ロ関係の安定要因となっていると分析された。
シンポジウムの最後には、全体討論の時間が設けられ、各報告への質疑応答が活発に行われ、エネルギー安全保障を中心とする日ロ経済協力の可能性がグローバルな視点から議論された。率直な反論と意見交換を通じて、国際関係にエネルギー安全保障がどのような影響を及ぼしているのかについて我々の認識を深めることができた。
欧米からアジアへの中長期的なパワーシフトに対応してロシアの東方シフトが進む中、今日の日ロ協力が大きな課題として浮上している。この問題は単なる二国間の問題にとどまらず、東アジア経済、ひいては世界経済の構造変化にもつながるグローバル・イシューとなっている。本シンポジウムでは、この問題に詳しい研究者、実務家、ジャーナリストが集まり、グローバルの視点から日ロ経済協力とエネルギー安全保障の展望について議論した。
シンポジウムでは、櫻井公人・立教大学経済研究所長からの問題提起の後に、五つの報告と全体討論が行われた。
第一報告では、「欧ロ関係の変化とロシア東方シフトのゆくえ」というテーマの下で、蓮見雄氏(立正大学経済学部教授)よりロシアがアジアに向かわざるを得ない背景として欧ロ間の政治経済的変化が考察され、ロシアはヨーロッパの市場を確保しながらもアジア市場を開拓しなければならなくなったことが指摘された。
第二報告では、「ロシア・エネルギー戦略のキーポイント」のテーマの下で、 本村眞澄氏(JOGMEC主任研究員)より戦後ソ連体制から今日に至るまで原油・ガスをめぐるソ連・ロシア側のエネルギー販売政策についての検討が行われ、それが日本側にとって持つエネルギー安全保障としての重要性が考察された。
第三報告では、「ロシアの資源開発と日ロ経済協力」というテーマの下で、杉浦敏廣氏(環日本海経済研究所共同研究員)よりロシアの原油・ガス生産量および輸出価格への検討を踏まえてその推移がロシア経済に及ぼす影響や、その中で要請される日ロ経済協力の必要性に関する報告が行われた。
第四報告では、「プーチン戦略のねらいと日ロ関係」というテーマの下で、大野正美氏(朝日新聞記者)より中露善隣友好条約の締結を事例として日ロ両国が経済協力を通じて経済合理性を追及する中、そこに内在している領土問題の複雑性が国際政治的に検討され、その妥協可能性が論じられた。
第五報告では、「中ロ関係は蜜月・安定に向かうのか」というテーマの下で、酒井明司氏(三菱商事シニアアドバイザー)より「中国の内政と経済」、「米ロ関係、米中関係」という二つの要素から中ロ関係の歴史的展開と現在状態が考察され、アメリカとの対立、反イスラム・反テロ、両国間の経済関係などが中ロ関係の安定要因となっていると分析された。
シンポジウムの最後には、全体討論の時間が設けられ、各報告への質疑応答が活発に行われ、エネルギー安全保障を中心とする日ロ経済協力の可能性がグローバルな視点から議論された。率直な反論と意見交換を通じて、国際関係にエネルギー安全保障がどのような影響を及ぼしているのかについて我々の認識を深めることができた。
蓮見 雄氏(立正大学経済学部教授)「欧ロ関係の変化とロシア東方シフトのゆくえ」
本村 眞澄氏(JOGMEC主任研究員)「ロシア・エネルギー戦略のキーポイント」
酒井 明司氏(三菱商事シニアアドバイザー)「中ロ関係は蜜月・安定に向かうのか」
杉浦 敏廣氏(環日本海経済研究所共同研究員)「ロシアの資源開発と日ロ経済協力」
大野 正美氏(朝日新聞記者)「プーチン戦略のねらいと日ロ関係」
立教大学経済研究所第4回学術研究大会「思想のちから、古典のちから」が2017年3月11日(土)に8号館8303教室において開催された。
櫻井公人氏(経済研究所長、本学経済学部教授)による開会挨拶とコーディネイターの佐々木隆治氏(本学経済学部准教授)による問題提起に続き、(1)服部正治氏(本学名誉教授)「古典の読まれ方:スミスとリカードウ」、(2)佐藤有史氏(本学経済学部教授)「奇跡の200年:1623年‐1823年のイギリス古典派経済学」、(3)水戸公氏(本学経済学部元教授)「マルクスとウェーバーそしてバーナード—資本と組織の現在—」の報告が行われた。引き続きディスカッションの時間がもたれ、各報告を中心に経済学の歴史をめぐってフロアの参加者を含め活発な意見交換がなされた。当日は、本学名誉教授、本学経済学部の退職者、本学経済学研究科の修了生、一般参加者など約50名が参加した。
本大会は、本学経済学部にゆかりのある研究者(卒業生、名誉教授、助手・助教経験者など)による年に一度の研究会であり、研究上の交流を通じて懇親を深め、経済学部および経済学研究科の研究・教育の向上を図ることを目的にしている。今大会では経済学の思想と歴史を中心とする統一テーマを通じて本学経済学部の歴史を振り返る好機となり、菅沼隆氏(本学経済学部教授)の挨拶によって盛況のうちに幕を閉じた。
櫻井公人氏(経済研究所長、本学経済学部教授)による開会挨拶とコーディネイターの佐々木隆治氏(本学経済学部准教授)による問題提起に続き、(1)服部正治氏(本学名誉教授)「古典の読まれ方:スミスとリカードウ」、(2)佐藤有史氏(本学経済学部教授)「奇跡の200年:1623年‐1823年のイギリス古典派経済学」、(3)水戸公氏(本学経済学部元教授)「マルクスとウェーバーそしてバーナード—資本と組織の現在—」の報告が行われた。引き続きディスカッションの時間がもたれ、各報告を中心に経済学の歴史をめぐってフロアの参加者を含め活発な意見交換がなされた。当日は、本学名誉教授、本学経済学部の退職者、本学経済学研究科の修了生、一般参加者など約50名が参加した。
本大会は、本学経済学部にゆかりのある研究者(卒業生、名誉教授、助手・助教経験者など)による年に一度の研究会であり、研究上の交流を通じて懇親を深め、経済学部および経済学研究科の研究・教育の向上を図ることを目的にしている。今大会では経済学の思想と歴史を中心とする統一テーマを通じて本学経済学部の歴史を振り返る好機となり、菅沼隆氏(本学経済学部教授)の挨拶によって盛況のうちに幕を閉じた。
2015年度 講演会等のお知らせ及び開催報告
はじめに、小林尚明氏(公認会計士・日本公認会計士協会)より、基本的かつ非常に大切な公認会計士試験の仕組みや業務領域の説明をしていただき、また、公認会計士という職業及び監査という業務の素晴らしさをご自身の経験を踏まえて、大変わかりやすくお話しいただいた。
次に、昨年、公認会計士試験に合格し、今年から大手監査法人に勤務し始めた井黒末菜氏(本学経済学部会計ファイナンス学科卒・2014年合格)から、御自身がいつどのように公認会計士試験へのチャレンジを始めたのか、その後の受験生活の工夫や試験勉強のポイントなどについての具体的なお話をいただいた。参加者にとって公認会計士試験の勉強をイメージしやすく、かつ、自らの将来を考えるうえで大きな示唆を得られるような内容であった。
また、山田浩一氏(公認会計士・立教公認会計士会会長)からは、公認会計士として長年活躍してきたご経験から、主に、監査以外のフィールドでの公認会計士の業務領域や本学OBの公認会計士が実際にどのように活躍されているか等について語っていただいた。また、立教大学関係者の昨年の合格者数(現役学生を含む)とともに、立教公認会計士会についても簡単にご説明いただいた。
質疑応答も活発に行われ、予定時間を過ぎても、また、講演会終了後も個別に質問があり、講師の先生方には丁寧にお答えいただいた。
繁忙期にもかかわらず、後輩のために長時間にわたって講演会に参加していただいた講師の先生方には、篤くお礼を申し上げたい。
次に、昨年、公認会計士試験に合格し、今年から大手監査法人に勤務し始めた井黒末菜氏(本学経済学部会計ファイナンス学科卒・2014年合格)から、御自身がいつどのように公認会計士試験へのチャレンジを始めたのか、その後の受験生活の工夫や試験勉強のポイントなどについての具体的なお話をいただいた。参加者にとって公認会計士試験の勉強をイメージしやすく、かつ、自らの将来を考えるうえで大きな示唆を得られるような内容であった。
また、山田浩一氏(公認会計士・立教公認会計士会会長)からは、公認会計士として長年活躍してきたご経験から、主に、監査以外のフィールドでの公認会計士の業務領域や本学OBの公認会計士が実際にどのように活躍されているか等について語っていただいた。また、立教大学関係者の昨年の合格者数(現役学生を含む)とともに、立教公認会計士会についても簡単にご説明いただいた。
質疑応答も活発に行われ、予定時間を過ぎても、また、講演会終了後も個別に質問があり、講師の先生方には丁寧にお答えいただいた。
繁忙期にもかかわらず、後輩のために長時間にわたって講演会に参加していただいた講師の先生方には、篤くお礼を申し上げたい。
立教大学経済学部と台湾国立東華大学主催の国際シンポジウム「東アジア資本主義の矛盾-その解決にむけて」が、2015年7月11日~7月12日、立教大学池袋キャンパス太刀川記念館3階多目的ホールにおいて開催された。
アジア地域では世界経済における地位の向上、地域内でのヒト・モノ・カネ・情報の活発化にともなう相互依存関係の進展がみられる一方で、そのなかで矛盾も生じている。本シンポジウムでは、台湾の大学と日本の大学の知的交流を通じて、こうしたアジアに内包する二面性の分析、多様性と共通性の理解、解決すべき課題の解明を目指した。
シンポジウムでは、7月11日の開会式で郭洋春先生(立教大学経済学部教授)から主旨説明、須永徳武先生(立教大学経済学部長)から開会の辞をいただいたのちに、7月11日と12日の2日間にわたって各セッションの報告と全体討論が行われた。
セッション1では、シンポジウム全体のオープニングとして「次世代の経済を設計する」というテーマの下で、陳東升先生(国立台湾大学社会学部優秀教授)による従来の経済システムに対置する「オルタナティブ経済」、郭洋春先生(立教大学経済学部教授)による従来の経済学に対置する「平和経済学」の提案が行われた。
セッション2では、「産業構造・企業からみるアジア」のテーマの下で、石井優子先生(立教大学経済学部兼任講師)よりタイの産業構造と経済格差の関係、周素卿先生(国立台湾大学地理環境資源学部教授、国立台湾大学理学院副院長)より大学の社会的責任についての報告が行われた。
セッション3では、「マネーの移動、ヒトの移動からみるアジア」というテーマの下で、星野智樹(立教大学経済学部助教)より国際収支分析に基づいた中国の貿易動向や外貨準備がもつ影響力、田畠真弓先生(国立東華大学社会学部副教授)より中国人観光客が台湾の現地に与えるインパクトに関する報告が行われた。
セッション4では、「現代アジアの経済事情」というテーマの下で、林宗弘先生(中央研究院社会学研究所副研究員)より中国に進出した台湾企業の変貌と台湾経済へのインパクト、張紀潯先生(城西大学経営学部教授、立教大学経済学部兼任講師)より中国の国家戦略としての「一帯一路」開放戦略についての報告が行われた。
セッション5では、本シンポジウムのテーマである「東アジア資本主義をめぐる問題」に関する報告が行われ、謝斐宇先生(中央研究院社会学研究所助研究員)による台湾の中小企業のネットワーク、鄭力軒先生(国立政治大学社会学部副教授)による人口問題からみた東アジアの今後、櫻井公人先生(立教大学経済学部教授)による中国経済と米国経済がもつ東アジアに対するインパクトについての報告が行われた。
シンポジウムの最後には、以上の報告を踏まえたうえでの全体討論が行われ、各報告への質疑応答、東アジア資本主義について抱えている問題点や議論の対象にするべき事柄の確認、提言が行われた。日本と台湾という国際的な議論が、また、報告者に加えてオーディエンスも含めた活発な議論が展開され、主旨に沿った有意義なシンポジウムになったといえるだろう。当日にご参加された報告者の先生方、運営や準備に関わった方々、会場に足を運んでくださったオーディエンスの方々へ深く感謝申し上げる次第である。
アジア地域では世界経済における地位の向上、地域内でのヒト・モノ・カネ・情報の活発化にともなう相互依存関係の進展がみられる一方で、そのなかで矛盾も生じている。本シンポジウムでは、台湾の大学と日本の大学の知的交流を通じて、こうしたアジアに内包する二面性の分析、多様性と共通性の理解、解決すべき課題の解明を目指した。
シンポジウムでは、7月11日の開会式で郭洋春先生(立教大学経済学部教授)から主旨説明、須永徳武先生(立教大学経済学部長)から開会の辞をいただいたのちに、7月11日と12日の2日間にわたって各セッションの報告と全体討論が行われた。
セッション1では、シンポジウム全体のオープニングとして「次世代の経済を設計する」というテーマの下で、陳東升先生(国立台湾大学社会学部優秀教授)による従来の経済システムに対置する「オルタナティブ経済」、郭洋春先生(立教大学経済学部教授)による従来の経済学に対置する「平和経済学」の提案が行われた。
セッション2では、「産業構造・企業からみるアジア」のテーマの下で、石井優子先生(立教大学経済学部兼任講師)よりタイの産業構造と経済格差の関係、周素卿先生(国立台湾大学地理環境資源学部教授、国立台湾大学理学院副院長)より大学の社会的責任についての報告が行われた。
セッション3では、「マネーの移動、ヒトの移動からみるアジア」というテーマの下で、星野智樹(立教大学経済学部助教)より国際収支分析に基づいた中国の貿易動向や外貨準備がもつ影響力、田畠真弓先生(国立東華大学社会学部副教授)より中国人観光客が台湾の現地に与えるインパクトに関する報告が行われた。
セッション4では、「現代アジアの経済事情」というテーマの下で、林宗弘先生(中央研究院社会学研究所副研究員)より中国に進出した台湾企業の変貌と台湾経済へのインパクト、張紀潯先生(城西大学経営学部教授、立教大学経済学部兼任講師)より中国の国家戦略としての「一帯一路」開放戦略についての報告が行われた。
セッション5では、本シンポジウムのテーマである「東アジア資本主義をめぐる問題」に関する報告が行われ、謝斐宇先生(中央研究院社会学研究所助研究員)による台湾の中小企業のネットワーク、鄭力軒先生(国立政治大学社会学部副教授)による人口問題からみた東アジアの今後、櫻井公人先生(立教大学経済学部教授)による中国経済と米国経済がもつ東アジアに対するインパクトについての報告が行われた。
シンポジウムの最後には、以上の報告を踏まえたうえでの全体討論が行われ、各報告への質疑応答、東アジア資本主義について抱えている問題点や議論の対象にするべき事柄の確認、提言が行われた。日本と台湾という国際的な議論が、また、報告者に加えてオーディエンスも含めた活発な議論が展開され、主旨に沿った有意義なシンポジウムになったといえるだろう。当日にご参加された報告者の先生方、運営や準備に関わった方々、会場に足を運んでくださったオーディエンスの方々へ深く感謝申し上げる次第である。
プログラム
1.開会 (10:00)
「開会あいさつ」
櫻井公人氏(立教大学経済研究所長)
2.基調講演 (10:10~12:00)
「ヨーロッパにおける有機食品市場の現状と課題」
ブルクハード・シェア 氏 (ドイツ/フランス・Ecozept 共同代表者)
「有機食品をめぐる消費者研究の動向」
ウーリッヒ・ハム 氏 (ドイツ・カッセル大学 有機農業科学部 教授)
3.研究報告 (13:00~15:00)
「日本における有機農産物市場の変遷と消費者の位置づけ」
酒井 徹 氏(秋田県立大学 准教授)
「有機直売市の存在意義とその活用:オーガニック・マルシェの事例から」
鷹取 泰子 氏(農政調査委員会専門調査員)
「日本とドイツにおける有機食品購買層の特性~価値観とライフスタイルを中心に~」
谷口 葉子 氏(宮城大学 助教)
4.パネルディスカッション (15:30~17:15)
コーディネーター: 大山利男 氏(立教大学 経済学部 准教授)
日本で有機食品市場を発展させていくための方策について講演者と共にディスカッションを行いました。
5.閉会 (17:15)
基調講演者プロフィール
ウーリッヒ・ハム 氏 (Ulrich Hamm, Dr.)ドイツ・カッセル大学 有機農業科学部 教授。
農産物・食品マーケティング学科長。国際有機農業学会(ISOFAR) 理事。
食品マーケティングの専門家。有機農産物を題材に数多くの論文を執筆・指導をしてきた。
EU域内で実施されている様々な共同研究プロジェクトで主要な役割を果たしている。
ブルクハード・シェア 氏 (Burkhard Schaer, Dr.)
ドイツ/フランス・Ecozept GbR 共同代表者。農学博士。
農産物・食料消費の研究者・コンサルタント。農村開発、有機食品市場、食品の地場流通等を専門とする。
ミュンヘン工科大学で教鞭をとった後、2000年にコンサルティング会社
Ecozept GbR. を設立。業務に従事する傍ら、
EU域内における数々の研究プロジェクトに参画している。
開催報告
立教大学経済研究所・日本有機農業学会主催にて、9月9日(水)立教大学太刀川記念館3階多目的ホールで開催された。多方面から約100名の参加者となった。有機食品市場が成長したヨーロッパ諸国では、消費者行動研究によって有機食品の購買者層の特性や購買動機などが明らかにされつつあり、このシンポジウムでは、ヨーロッパにおける消費者研究の動向と成果について基調講演をいただいた。また、日本市場の特性や需要拡大の可能性について検討するため、日本国内の研究者を交えた個別報告と、日欧両研究者によるパネルディスカッションを行った。
有機食品市場の成長と消費者行動について、ヨーロッパ諸国と日本を比較した議論を展開。調査研究手法や課題に関する知的共有化をすすめた。とくに学外の参加者が多く、このテーマの社会的関心の高さがうかがえ、時宜を得た講演会・シンポジウムとなった。
プログラム
1.開会 (18:30)
「開会あいさつ」
櫻井公人氏(立教大学経済研究所長)
2.講演1(18:40~19:00)
「『肩をすくめるアトラス』の思想と米国の政治文化」
脇坂あゆみ氏(アイン・ランド翻訳家)
3.講演2(19:00~19:40)
「自由市場資本主義の道義的基礎−茶会党(Tea Party)・FRBと金本位・格差と公平をめぐる経済政策思想 」
ヤロン・ブルック氏(アイン・ランド研究所所長)
4.フリーディスカッション・質疑(19:40~20:40)
5.閉会(20:45)
開催報告
立教大学経済研究所主催により、1月20日(水)8号館教室にて、「アイン・ランドとアメリカ自由市場資本主義の底流」と題する公開講演会を開催した。学内外の多方面から32名の参加者となった。
研究所長あいさつでは、茶会党などが大統領選にも影響を与えているが、小さな政府志向の下でも、公共財の提供、環境規制など独占化した大企業への規制、金融のモラルハザードなどについて、しっかりしたロジックで語ることができるかどうかが問われていると問題提起された。
講演1では、アイン・ランド『肩をすくめるアトラス』を翻訳された脇坂氏が、作家アイン・ランドの人生とその著作のアメリカ社会への影響力について、昨今話題となる米国大統領選の候補者の言説やご自身の米国での体験も踏まえて、わかりやすく紹介された。
講演2では、アイン・ランド研究所長のヤロン・ブルック氏がアイン・ランドの思想・主張が米国の政界ばかりでなく、シリコンバレーなどベンチャー企業家など多方面にわたって影響力を持ってきたこと、また、その思想は決して無政府主義ではなく、国防・司法などにおいて確固とした政府の役割を示していることを主張された。政府の唯一かつ重要な役割は、個人の能力の発揮(個人の権利)を妨げないこと(守ること)にあり、個人の権利を最大限にすることが経済的にも正しいし、道徳的にも正しいというのがアイン・ランドの思想であるとされた。また、誤解されてはいけないこととして、同研究所は非営利法人なので、決して共和党などの特定政党を支持しているわけではないと明言された。
以上の講演を踏まえて質疑では、大きな政府をもつ北欧諸国の高い実績をどう考えるのか、自由市場資本主義が生み出す独占にどう対処するのかなど、フロアから質問や意見が提起され、ヤロン・ブルック氏も大いに奮発して返答されるなど、活発なやりとりが繰り広げられ、非常に盛況のうちに終演の時間を迎えた。
立教大学経済学研究所主催の第3回学術研究大会「アベノミクスのゆくえ−転機にたつ日本経済」が、2016年3月12日(土)、池袋キャンパス8号館8303教室で開催された。櫻井公人氏(経済研究所長、本学経済学部教授)による開会挨拶および問題提起、(1)小西一雄氏(本学名誉教授、東京交通短期大学学長)「リフレ論の終焉」、(2)櫻本健氏(本学経済学部准教授)「GDP600兆円と物価上昇率2%のつくり方」、(3)小松善雄氏「アベノミクスと東日本大震災復興」(本学経済学部元教授)の報告が行われた。
当日は、本学名誉教授、本学経済学の退職者、本学経済学研究科の修了生、一般参加者など約100名が参加し、先行きが懸念される「アベノミクスのゆくえ」をめぐって活発な議論がなされた。本大会は、本学経済学部にゆかりのある研究者(卒業生、名誉教授、助手・助教経験者など)による年に一度の研究会であり、研究上の交流を通じて懇親を深め、経済学部および経済学研究科の研究・教育の向上を図ることを目的にしている。統一テーマを設定した今大会では、充実した議論が行われ、盛況のうちに幕を閉じた。
当日は、本学名誉教授、本学経済学の退職者、本学経済学研究科の修了生、一般参加者など約100名が参加し、先行きが懸念される「アベノミクスのゆくえ」をめぐって活発な議論がなされた。本大会は、本学経済学部にゆかりのある研究者(卒業生、名誉教授、助手・助教経験者など)による年に一度の研究会であり、研究上の交流を通じて懇親を深め、経済学部および経済学研究科の研究・教育の向上を図ることを目的にしている。統一テーマを設定した今大会では、充実した議論が行われ、盛況のうちに幕を閉じた。